2009 Fiscal Year Annual Research Report
「中国的」イスラームの展開と地域差:中国内地と西北部の統合・比較から
Project/Area Number |
09J04290
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中西 竜也 Kyoto University, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | スーフィズム / 道教 / 中国ムスリム / 中国イスラーム思想史 / 異文化交渉 / イブン・アラビー / カーディリーヤ / 土着化(中国化) |
Research Abstract |
中国イスラーム思想史、とくにイスラームの「中国化」の展開、の全体像把握を目指す、本研究の当面の課題は、19世紀中国西北に活躍したカーディリーヤ派(イスラーム神秘主義の一流派)のスーフィー(イスラーム神秘主義者)たちの思想、とくにその「中国化」の様相を、彼らが著した漢語イスラーム文献にもとづいて探求し、彼らの思想史的位置を明らかにすることである。そのためには、まず、問題の漢語イスラーム文献に援用された、アラブ・ペルシア語イスラーム文献や漢語道教文献、さらには他の中国ムスリム思想家の著作など、様々な典拠を同定し、その上でそれら典拠の複雑な絡み合いの構造を解明するという作業が必要となる。従って、カーディリーヤ派漢語文献の典拠同定こそが本研究の鍵となるが、本年度はそれに関する多くの成果があった。第一に、中国内地のムスリムのあいだでもよく読まれたナジュムッディーン・ラーズィーの『下僕たちの大道』やアズィーズ・ナサフィーの『至遠の目的地』が、問題の漢語イスラーム文献にも援用されていることを明らかにした。第二に、カーディリーヤ派漢語文献に特徴的なアラビア文字の秘教的解釈が、イブン・アラビーの『ミームとワーウとヌーンの書』に記された思想に酷似することを突き止めた。第三に、現地調査で得た民間所蔵のアラブ・ペルシア語書簡史料の分析から、カースィム・アンワールのペルシア語韻文作品が、中国西北のカーディリーヤ派スーフィーのあいだでよく読まれていたことが、新たに判明した。第四に、カーディリーヤ派漢語文献のひとつ、楊保元の『綱常』に、道教文献のなかでもとくに朱元育の『悟真篇闡幽』が援用されていることを探り当てた。以上により、上述の課題の達成に向けて、大きな道が開けた。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article]2009
Author(s)
森本一夫(編)
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Journal Title
ペルシア語が結んだ世界-もうひとつのユーラシア史(第六章清代の中国ムスリムにおけるペルシア語文化受容)(北海道大学出版会)
Pages: 175-203
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