2010 Fiscal Year Annual Research Report
半導体二次元系のスピンを含むサブバンド構造の制御に関する研究
Project/Area Number |
09J04292
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
新井田 佳孝 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 低温物性 / 半導体物性 |
Research Abstract |
・谷分離のSi/SiO_2界面依存性に関する研究 谷自由度はSi等の間接ギャップを持つ半導体中の電子が持つ特徴的な自由度である。自由電子描像では谷自由度は縮退しており、伝導に寄与を及ぼさないが、過去の報告から数μeV~1meV程度の谷分離が観測されていた。我々の試料では、SOIによって作製された埋め込み酸化膜界面において非常に大きな谷分離が観測されたが、谷分離の原因は不明のままであった。私は埋め込み酸化膜付近の電子と正孔の伝導特性を比較した。埋め込み酸化膜付近の電子は大きな谷分離と同時に大きな伝導度の抑制を示したが、正孔系は若干の伝導度増加が見られた。 この実験から正孔移動度が良い界面付近において巨大な谷分離が発生することが分かった。この成果に関し、1件の国際会議における発表と、1件の国際シンポジウムにおける発表を行った。 ・二次元系の金属絶縁体相転移に関する研究 二次元系においては、アンダーソン局在のスケーリング理論から、温度低下に伴う抵抗上昇(絶縁相)が予想されていたが、近年、温度低下に伴う抵抗減少(金属相)の発現が報告された。この金属相の発現には谷自由度が関連しているという理論的指摘があるが、我々の試料は谷自由度を自由に制御できるために、この理論の検証を行うことができる可能性があった。私は谷偏極した状態で抵抗の温度依存性を測定した。抵抗は金属相の振る舞いを中間の温度領域で示したが、最低温では絶縁的な振る舞いを示した。これは試料の移動度の低下によるものなのか、それとも谷分離したことによる絶縁層の発現なのかは現時点では判断できていない。この測定の結果を日本物理学会において発表した。
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Research Products
(3 results)