Research Abstract |
本年度は,東京都区部の50地点で採水した地下水試料から医薬品類,人為起源ガドリニウムを分析することで,地下水の下水による汚染の実態を明らかにした。医薬品類は不圧地下水32地点中21地点,被圧地下水16地点中7地点,湧水2地点中2地点で,人為起源ガドリニウムは同じく7地点,1地点,0地点で検出された。医薬品類の中でcarbamazepineが19地点,crotamitonが18地点と最も多くの地点で検出された。地下水中で検出された医薬品類や人為起源ガドリニウムは下水の漏れに起因している可能性が高いと考えられた。医薬品類と人為起源ガドリニウムの分布は異なっており,E.coliの検出地点ではすべて医薬品類が検出されていたことから,測定した医薬品類は汚水一般に由来しており,人為起源ガドリニウムは病院排水に主として由来していると考えられた。下水と地下水における医薬品類の平均濃度を用いると,下水の1%相当が不圧地下水に漏出していると推定された。 次に,同じく東京都区部で採水した53地点の地下水試料から有機フッ素化合物(PFCs)を分析し,PFCsによる地下水汚染の実態を明らかにし,起源推定や汚染防止対策を推定した。 次に,同じく東京都区部で採水した53地点の地下水試料から有機フッ素化合物(PFCs)を分析し,PFCsによる地下水汚染の実態を明らかにし,起源推定と汚染防止対策の立案を行った。 PFCsは不圧地下水・被圧地下水・湧水ともに多くの地点で検出された。PFOA・PFOS・PFNAの濃度が1000ng/L近い地点も存在したことから,場所により深刻な汚染がみられた。地下水におけるPFCsの主起源には下水と道路排水が存在する。長鎖/(長鎖+短鎖)比を用いた下水と道路排水の寄与の推定結果では,4PFCAs(PFOA,PFNA,PFDA,PFUnDA)が100ng/Lを超える地点では下水が主たる汚染源と推定されたことから,下水による汚染の低減が効果的な対策であると推定された。長鎖/(長鎖+短鎖)比を用いて推定された下水由来の4PFCAs濃度は医薬品類と有意な正の相関があり,長鎖/(長鎖+短鎖)比を用いて推定された道路排水由来の4PFCAs濃度は重金属類と有意な正の相関があったことは,長鎖/(長鎖+短鎖)比による下水と道路排水の寄与の推定の妥当性を裏付けるものであった。
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