2009 Fiscal Year Annual Research Report
スピン完全測定から探る原子核中でのパイ中間子の振舞い
Project/Area Number |
09J04349
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
堂園 昌伯 Kyushu University, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | スピン双極子遷移 / テンソル力 / パイ中間子 / 偏極移行量 |
Research Abstract |
スピン双極子共鳴は軌道角運動量L=1(通常の空間での振動)とスピンS=1(スピン空間での振動)が結合した状態で、そのスピン・パリティは0^-,1^-,2^-の3つの状態がある。近年、核力の重要な性質の一つであるテンソルカ成分(主にパイ中間子交換力に起因)の寄与が、この3つの状態に強く依存する事が理論的に示唆されている。このテンソルカ成分の定量的理解のため、各スピン双極子状態の分離が強く望まれているが、通常の断面積の測定ではこれら3つの状態の分離は非常に難しい。そこで、我々はスピン・パリティに敏感な全偏極移行量(スピン完全セット)を用いてスピン双極子状態を分離することを目指した。今年度は、前年度に測定した^12C(p,n)反応のデータに対し、スピン完全セットを用いた多重極展開法(スピン多重極展開法)を、新方法として適用し、^12Cのスピン双極子状態の分離を試みた。その結果、励起エネルギーE_x=7MeV付近のスピン双極子共鳴は低励起側が2^-状態、高励起側が1^-状態から成る・E_x=8.5MeV付近に0^-状態があるとの知見を得た。これらの結果は過去に測定されているアナログ反応の結果とも一致していることから、スピン多重極展開法が正しく機能していることを示しており、この方法により、スピン双極子状態に関する定量的情報が得られると考える。今後、スピン多重極展開法の精緻化により最終的な結果を得て、理論計算と比較することにより、テンソルカに関する定量的知見を得る予定である。
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Research Products
(1 results)