2011 Fiscal Year Annual Research Report
波長選択性熱放射を用いた量子共鳴励起による化学反応促進
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09J04382
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
前神 有里子 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | メタン水蒸気改質 / 水素 / 波長選択性熱放射 / 波長選択性熱放射 / 量子共鳴励起 / 表面周期微細構造 / ガス質量分析 / 量子分子動力学計算 |
Research Abstract |
水素を生成するために工業的に最も用いられているメタンの水蒸気改質の効率を向上させることを目的に、波長選択性熱放射を用いた共鳴振動励起による化学反応促進のメカニズムを実験と数値解析を用いた多角的な視点から解明をする。 これまで、二次元周期微細構造を有する波長選択エミッタを用いた波長選択性熱放射による光励起が、直接分子の振動に影響を与え、メタン水蒸気改質における水素生成促進に有用であることが明らかになった。この反応メカニズムを解明するため、メタンと水蒸気の混合比が1:1であるメタンの水蒸気改質において改質ガスの定量化を行った。その結果、波長選択エミッタを用いた場合、平衡状態に非常に近いメタン濃度および水素濃度が得られたが、一酸化炭素の濃度は平衡状態を著しく上回り、二酸化炭素の濃度は平衡状態の約半分相当あり、非平衡反応や他の化学反応が寄与している可能性が示唆される。さらに、質量分析計を用いた微量ガス成分の定性を行い、中間体の状態から由来する副生成物と考えられるエタンやエチレンが測定され、これらの実験結果を基に共鳴光照射環境下における化学反応メカニズムの考察を行っている。 また、メタン改質による水素生成のための新規太陽集光エネルギーシステムのコンセプトとして、特定の波長域において太陽光は光子として直接利用され、その他の波長域の太陽光は熱に変換され、波長選択エミッタを用いた有効的な熱放射スペクトルの制御によりさらに光子として利用されるものを提案した。 Tight-Binding量子分子動力学法によるシミュレーションは、分子間や原子間の相互作用が影響し、分子構造の安定化を図るためにパラメータ調整、プログラム改良を行ってきた。かなり良い条件が得られる段階まで進んでおり、最適条件を用いてメタン分子が持つ特定の波長域(3039cm^<-1>)に光を照射し振動励起状態における反応素過程を調べるために計算を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災により研究室および利用する研究施設の装置に甚大な被害が生じたため、サンプル作製工程を変更する必要があり、その条件出し等にかなりの時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
東日本大震災における被災による採用期間延長措置を受けることができたため、今後は以下の通り研究を推進していく予定である。 実験において、質量分析計を用いた微量ガス成分の定性を行い、共鳴光照射環境下における反応メカニズムの解明に繋がる結果は得られており、考察を進めていく。さらに、昨年度新しい作製工程で取り組んだサンプルについて、これまでのサンプルと比較し、作製工程、形状、光学特性、材料特性などをさらに考察していく。Tight-Binding量子分子動力学法によるシミュレーションは最適なパラメータを使用し、光を照射した振動励起状態における反応の素過程について計算を行い、反応機構解明に繋げる。以上の内容から論文の執筆を行っていく。 太陽集光システムを用いた実験は装置を屋上に設置しているため、震災による余震などの危険性があるため中止している。
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