2012 Fiscal Year Annual Research Report
波長選択性熱放射を用いた量子共鳴励起による化学反応促進
Project/Area Number |
09J04382
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
前神 有里子 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | メタン水蒸気改質 / 水素 / 波長選択性熱放射 / 波長選択性熱放射 / 量子共鳴励起 / 表面周期微細構造 / ガス質量分析 / 量子分子動力学計算 |
Research Abstract |
水素を生成するために工業的に用いられているメタンの水蒸気改質の効率を向上させることを目的として、波長選択性熱放射を用いた共鳴振動励起による化学反応促進のメカニズムを、実験と数値解析を用いた多角的な視点から解明する。これまで、二次元周期微細構造を有する波長選択エミッタを用いた波長選択性熱放射による光励起が、直接分子の振動に影響を与え、平衡状態に非常に近いメタン濃度および水素濃度が得られるが、一酸化炭素の濃度は平衡状態を著しく上回り、二酸化炭素の濃度は平衡状態の約半分相当となることが明らかになっている。 質量分析計を用いた微量ガス成分の定性分析でも、中間体の状態から由来する副生成物と考えられるエタンやエチレンが測定されていることから、非平衡反応や他の化学反応が寄与していると考えられる。本年度は量子分子動力学法によるシミュレーションを行い、共鳴光照射環境下における化学反応メカニズムの考察を行った。具体的には、第一原理量子分子動力学計算を用いて、メタン分子の振動励起の有無で、メタンと水の2分子間における衝突エネルギー依存性や衝突角度依存性を計算し、分子の挙動と反応生成物について明らかにした。さらに、Tight-Binding量子分子動力学計算を用いて、メタンと水のそれぞれ5分子において、メタン分子の伸縮振動である波長域(3019cm^<-1>)の吸収帯に選択的に光を照射することにより振動励起した状態における大規模シミュレーションを行った。ここでは、分子構造の安定化を図るためにパラメータを調整し、プログラム改良して振動励起状態を再現した。これにより、中間体生成物を含む反応の素過程の一部が明らかになった。 以上の結果として、波長選択エミッタを用いた波長選択性熱放射によってメタンおよび水分子の近中赤外における振動のエネルギー準位を共鳴励起することにより、化学反応が促進され、メタンの水蒸気改質における水素の生成効率が向上することが判明した。
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