2009 Fiscal Year Annual Research Report
ステンレス鋼のイオン照射後変形挙動解析による照射誘起応力腐食割れ機構解明の新展開
Project/Area Number |
09J04403
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
丹野 敬嗣 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | オーステナイトステンレス鋼 / 不均一変形 / 水素イオン照射 / EBSD解析 |
Research Abstract |
水素イオン照射を用いた照射実験を行うために、316Lステンレス鋼の通常多結晶材および粒界制御材を用いた照射用微小試験片を製作した。照射量や塑性ひずみ量と不均一変形挙動との関係を明らかにするために、試験片に対して水素イオン照射を行い、照射後に段階的に塑性ひずみを導入することに、光学顕微鏡による表面観察と後方散乱電子回折(EBSD)解析を用いた局所的なひずみの評価を行った。 照射した通常多結晶材は、塑性ひずみの導入とともに粗大すべりが試料表面に現れたすべり線が観察された。粒界とそこで拘束されているすべり線の交点では、局所的なひずみの大きさと相関があるとされる局所方位差(KAM)が増加していた。また、微細組織観察では、粗大すべりが粒界で拘束されている箇所にひずみ場によるコントラストが観察されたことから、不均一変形評価におけるEBSD解析を用いた局所的なひずみ評価が有効であることが実証された。塑性ひずみ量を増加させるとある段階で拘束されていたすべり線が隣の結晶粒へ伝播し、KAMが増加から減少に転じた。この塑性ひずみのしきい値は照射損傷量0.1dpaでは約4%だったのに対し、1dpaでは約1%と照射量が増加するとともに減少した。すべり線の発生も高照射量ではより小さな塑性ひずみで発生し、すべり線の間隔とそれによる表面の段差の高さも増加した。このことは原子炉の高経年化にともなう照射量の増加が、不均一変形による照射誘起応力腐食割れ(IASCC)の発生を促進させることを意味しており、炉内機器の許容照射量を検討する上で重要な知見である。 初めて照射を行った粒界制御材においても、すべり線と粒界の交点近傍でKAMが増加していた。すべり線の間隔と段差は通常多結晶材よりも大きかった。今年度の実験では粒界性格の影響は確認できず、両者の不均一変形挙動の違いは結晶粒径の大きさの違いによるものだと考えられる。
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