2011 Fiscal Year Annual Research Report
強相関有機伝導体および遷移金属錯体における超高速光誘起相転移の研究
Project/Area Number |
09J04458
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川上 洋平 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 強相関電子系 / 光誘起相転移 / 超高速分光 / 有機伝導体 / 遷移金属錯体 |
Research Abstract |
本研究の目的は、有機伝導体における光誘起相転移の初期ダイナミクスを、時間軸上で捉えることである。前年度には、電荷秩序絶縁体(α-(ET)_2I_3;Phys.Rev;Lett. 105,246402(2010)、θ(ET)_2RbZn(SCN)_4)およびダイマーモット絶縁体(κ(d-ET)_2Cu_2[N(CN)_2]Br)における光誘起絶縁体-金属転移の初期過程を明らかにした。本年度はまず、パルス圧縮の過程においてチャープミラーを導入し、赤外12fsパルスのビーム品位を向上させた。さらに、電荷秩序絶縁体とダイマーモット絶縁体の競合が示唆されているκ(ET)_2Cu_2(CN)_3において、よく知られる光誘起絶縁体-金属転移(光照射に伴う電荷秩序の融解)之は明確に異なる、光誘起分極クラスター形成(光照射に伴う電荷秩序の形成)の初期ダイナミクスを捉えた。この物質においても、α(ET)_2I_3と同様に、光励起直後に電荷ギャップを反映する電荷のコヒーレント振動が観測された。この結果は、電子相関によってダイマー上に局在した電荷のコヒーレント振動が、光誘起分極クラスターの形成を導くことを示唆する。また、遷移金属酸化物LaCoO3においても、光励起直後に電荷ギャップを反映する電子のコヒーレント振動が起こる様子も捉えている。有機伝導体における光誘起相転移の初期ダイナミクスの系統的な探索を行うことができただけではなく、赤外12fsパルス光源の改良(パルス強度の増大、ビーム品位の向上)によって、遷移金属酸化物においても、電荷ギャップのエネルギーに相当する時間分解能での測定が可能となった。これらの結果は、光誘起相転移の超高速初期ダイナミクスの研究を、新たなステップへ進めるものといえる。 さらに、光電場と相互作用する電子の運動を、位相情報まで含めて捉えるため、フルコヒーレント(CEP制御)赤外極超短パルス光源の製作を開始した。現在、中空ファイバーを用いることで、1-2μm(フーリエ限界パルス幅~6fsに相当)の超広帯域赤外パルスの発生に成功している。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] Ultrafast snapshots of light-electron-vibration interactions in α-, θ-, and κ-type BEDT-TTF salts2011
Author(s)
Y.Kawakami, Y.Sakurai, H.Itoh, S.Iwai, T.Sasaki, K.Yamamoto, K.Yakushi
Organizer
9th international symposium on crystalline organic metals, superconductors and ferromagnets
Place of Presentation
Gneizno, Poland
Year and Date
2011-09-27
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