2010 Fiscal Year Annual Research Report
地震性断層運動に伴う炭素物質の生成・改変と炭素物質による断層強度弱化過程の解明
Project/Area Number |
09J04493
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大橋 聖和 広島大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 断層ガウジ / グラファイト / 跡津川断層系 / 断層クリープ / 還元環境 / 摩擦試験 / 地震性断層すべり / 断層強度弱化 |
Research Abstract |
本年度は,断層帯へのグラファイト濃集過程の解明…1,グラファイトー石英混合物質を用いた摩擦試験…2,還元雰囲気下での高速摩擦試験…3の3つの課題において,それぞれ後述する成果を得た.1、跡津川断層系に分布する断層内物質の解析から,グラファイトの濃集には溶解沈殿作用が深く関与していることが明らかとなった.また,熱水起源の脈状グラファイトが脆性断層帯に沿って産することを見いだし,これらの作用により初生的に0~3vol%程度しか含まれないグラファイトが断層内部では10vol%以上に濃集することを明らかにした.2、グラファイトのような弱い物質は断層を動きやすくしうるが,これまで定量的な評価はなされてこなかった.そこで,グラファイトと造岩鉱物の代表である石英を任意の割合で混合させ,その強度がグラファイトの割合とともにどのように変化するかを調べた,その結果,グラファイト量比約10vol%を境に,急激に強度が低下することが明らかとなった.3、昨年度作成した雰囲気ガス制御装置を用い,還元環境下で大理石の高速摩擦試験を行った。試験後の分析から,断層面上にグラファイトが生成していることが明らかとなった,このことは,高速摩擦に起因した高温の気相反応によってグラファイトが無機的に生成したことを示す.本実験結果は,断層深部で推定される還元環境下での地震時の現象を理解する上で先駆けとなる.以上の研究は,複数の作用によって断層内部にグラファイトが濃集しうること,10vol%以上に濃集したグラファイト(例えば跡津川断層系)によって断層の強度が顕著に低下しうることを明確に示した.同時に,様々な造構場における国内外の断層からもグラファイトの存在が見いだされており,本研究で明らかにしたグラファイトの濃集とそれによる断層強度低下は,世界中の断層の地震地質学的理解に影響を及ぼすものと考えられる.
|
Research Products
(6 results)