2009 Fiscal Year Annual Research Report
生命系における同期ダイナミクス解析のための実験的手法の開発
Project/Area Number |
09J04536
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
太田 絵一郎 Kyoto University, 情報学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 位相振動子 / 力学系 / リズム / 位相応答 / 同期 / 実験測定 / 数理モデル / リミットサイクル |
Research Abstract |
本研究では,生命系におけるリズム・同期現象を解析するため,位相縮約理論に基づくアプローチを採る.リミットサイクル振動を示す生命系において,位相応答曲線と呼ばれる特性量が得られれば,対象の同期現象に関する定量的な解析が可能となる.本研究の目的は,従来法よりも優れた位相応答曲線の実験測定手法を開発し,それを用いて生命系における同期現象に関する新たな知識を得ることである.前年度までに揺らぎ刺激を用いる新しい実験測定手法を考案した.本年度に実施した事項として第一に,開発手法により正しく測定が行える条件を数値実験により系統的に調べた.その結果,測定に用いる揺らぎ刺激について(i)強度が背景雑音よりも同程度または強く,かつ非線形性が無視できる程度に十分弱いこと,(ii)自己相関関数の幅が十分短く,デルタ関数近似が妥当であることが必要な条件であることを明らかにした.この結果は測定に用いる刺激の選択指針を与えるという意義を持つ.これをもとに第二に,振動的な生命系の一つである真性粘菌を対象とした測定実験を共同研究で行った.時間的ランダムに発生するパルス列刺激を加え測定を行ったが,現状では安定した結果が得られたとは言い難い.原因として生体の揺らぎによる背景雑音が考えられるが,さらなる検討が今後の課題である.このように実際の実験においては,測定誤差の原因となる未知の雑音が存在するなど,数値実験とは異なる状況が予想される.そのような状況下でも手法が正しい結果を与えることを確認するため,第三に,実験上のコントロールが容易な電子回路を対象とした測定実験を行った.測定した位相応答曲線から予測した同期位相差パラメータは,実測値と精度良く一致した.このことは,測定結果が正しい位相応答曲線を与えていることを示している.次年度以降は,より様々な対象での同期解析に開発手法を活用していきたい.
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Research Products
(6 results)