2010 Fiscal Year Annual Research Report
教育効果を評価する道具としての統計的手法の応用および提案
Project/Area Number |
09J04555
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鈴川 由美 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 項目反応理論 / 認知的評価モデル / マルコフ連鎖モンテカルロ法 |
Research Abstract |
項目反応理論に基づく認知評価モデルの一つであるCao & Stokes(2008)の3つのモデルに関して,実データを用いて分析を行い,通常の2母数項目反応モデルと当該モデルとの比較を行った。 これらのモデルは,母数の推定に影響を与えると考えられる当て推量に関する母数をIRTモデルに組み込んだモデルである。IRT-TGモデルを用いた分析の結果,時間制限により項目の順番が後ろに位置するものほど無回答や誤答の多かったテストでは,後ろに位置する項目の困難度母数が2母数モデルでは高く推定され,IRT-TGモデルでは困難度母数の値が抑えられることがわかった。つまり,項目母数の推定に興味がある場合にはIRT-TGによって困難度母数の補正を行うことができる。しかしながら,困難度母数の変化に伴って能力値の推定値も変化するため,能力値によって得られる順位が両モデルで大きく変動する受験者が存在することがわかった。これは,後ろに位置する項目に回答していなくとも前に位置する項目の正答率が高ければ能力値が高く推定されることになるためである。その場合に推定される能力値は時間配分,回答スピードといった能力を推定すべき能力としては旨とらえていない。したがって,IRT-TGモデルの利用に際しては,後ろに位置する項目の正答率が時間制限などの理由により低いことが明白である場合は有効であるが,回答スピードを能力の一部としてとらえる場合は必ずしも適切であるとは言えない。そのため,当て推量と回答スピードの両者を考慮した新たなモデルの発展が今後期待できる。
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Research Products
(2 results)