2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J04618
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野田 祐樹 北海道大学, 大学院・環境科学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 金ナノ粒子 / 希土類フタロシアニンダブルデッカー / ナノ粒子集積体 / 物理吸着 / 単一電子トンネル伝導 / 帯電エネルギー / 非弾性的散乱 |
Research Abstract |
平成22年度の研究目的は金ナノ粒子-ダブルデッカー集積体の電子および幾何学的構造を検討し、量子伝導挙動を検討することでトンネル電子と磁性イオンとの相関を検討することであった。結果、後述したように、金ナノ粒子間の量子的な伝導電子と保護有機分子の磁性イオンが相関した、これまでにない電子輸送特性の観測に成功した。これにより本研究テーマの目的である、ナノ粒子間の量子伝導と機能性有機分子の電子構造との相関の系統的理解、及びナノスケールの複合構造に基づく分子エレクトロニクス素子実現にむけての基礎を確立することに成功した。 上記した研究目的を確実に達成するために、機能性分子として、希土類フタロシアニンダブルデッカー錯体(LnPc_2)に着目し、この錯体と金ナノ粒子(AuNP)が物理吸着により連結された集積体を合成した。具体的には希土類イオンに4f軌道が閉殻のLu^<3+>、1次の磁気異方性をもつTb^<3+>の2種を用い比較検討した。キャラクタリゼーションの結果、錯体はフタロシアニンのπ環状平面とAuNP表面とが平行になる配置で、AuNPを安定化していた。集積体の電子輸送特性を抵抗の温度依存性、I-V特性から比較検討した。結果、4f軌道が閉殻の電子構造を有するLuPc_2-AuNP集積体において、LuPc_2はトンネル障壁として機能し、粒子間を伝導する電子は単一電子トンネリングであることを明らかにした。また、伝導挙動のクロスオーバーが発現する温度領域とその意味を帯電エネルギー(Ec)から厳密に説明することができた。一方、TbPc_2-AuNP集積体において量子伝導電子と希土類イオンの磁性が相関した特異な量子伝導挙動が15~20K以下の低温領域で発現することを見出した。Ecの観点から予想される、単一電子トンネリングが発現するべき30K以下の温度領域において、TbPc2はトンネル障壁を通過する電子を強く非弾性的に散乱することで単一電子トンネリングを抑制していた。このように両者の電子輸送特性の差異は錯体の4f電子と粒子間の量子伝導電子の観点から説明することが可能であった。
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Research Products
(7 results)