2009 Fiscal Year Annual Research Report
特異な分子間相互作用を利用した新奇蛍光性分子設計への理論的アプローチ
Project/Area Number |
09J04660
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
斉田 謙一郎 Kyushu University, 理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 分子間相互作用 / 蛍光 / 電子励起状態 / 半古典化学動力学 / 電荷移動 |
Research Abstract |
本研究は、分子間相互作用が光吸収・発光に及ぼす影響を微視的立場より考察するための理論的ダイナミクス研究を目的としている(至22年度)。本年度は(1)分子間相互作用が光物理化学過程に顕著に影響を与える系についての研究(電子状態理論)、(2)ダイナミクス研究のための理論およびプログラム開発を実施した。溶液中で脱プロトン化したビスインドリルマレイミド分子の電子励起状態は分子内電荷移動状態であり、電荷移動性が殆ど見られない中性状態とは大きく異なる。脱プロトン種は極性溶媒中での溶質-溶媒分子間の静電相互作用により生じることが示唆される。電荷移動状態への励起は分子内ねじれ運動を引き起こし、実験で観測される蛍光の著しいストークスシフトの原因となる。また、実験的に分子内エネルギー移動が生じていると示唆されているクマリン誘導体3-amino-N-(7'-methoxy-4'-methyl-coumaryl)phthalimidc(AMMP)の高精度電子状態計算を行い、AMMPの蛍光過程には分子内ねじれが重要であることを明らかとした(AMMPについては実験分野の研究者と共著で論文を発表)。このように分子内ねじれ運動は分子機能を制御する上で重要である。ボルンーオッペンハイマー近似により原子核の運動を考慮していない電子状態理論計算ではその様な原子核の大きな変位を伴う過程の取扱いに限界があるためにダイナミクス研究が必須であるが、現在の理論では大自由度系の取扱いには限界がある。そこでHermanとKlukらによって開発された半古典動力学法に電子状態間の遷移を取り込んだ新しい理論・プログラム開発を行っている。今年度はその基本的な部分の開発を行ったが、非断熱遷移を考慮しなければスペクトルの再現ができない硫化水素分子で実施したベンチマーク計算で量子動力学法と遜色ない結果を得ることができ、かつ、計算コストを大幅に抑えられることを示すことができた。 次年度は本理論を用いて(1)の系の更なる調査を行う予定である。
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Research Products
(6 results)