2009 Fiscal Year Annual Research Report
日本古代における内裏供奉の変遷―宮中所々の特質をめぐって―
Project/Area Number |
09J04709
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
樋口 圭 (芳之内 圭) Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 所々 / 内豎所 / 内豎 / 内豎 |
Research Abstract |
平成21年度は、9世紀~11世紀前半の内裏供奉に関する分析を中心に行った。収集史料が予想以上に膨大であったため、所々の一つである内豎所に関する史料を優先的に収集・整理し、その内容の分析を行った。分析の結果、確認したことは下記の通りである。1、内竪所の内豎は、紫宸殿で行われる元日節会・白馬節会などの節会において供奉を行い、具体的には(1)諸官人を日華門から儀式の行われる閤門内へ参入させること、(2)紫宸殿・陣などに設けられる公卿等の食事の準備を行うこと、(3)南庭における騎射などの儀式において伝奏を行うことなどを役割としていた。活動の場は閤門内の殿庭だけでなく、公卿への奉仕に限り、殿上へ昇ることもあった。これらの節会のなかには8世紀半ばには内裏において儀式が行われていたものもあり、内豎も早い段階から内裏において同様な供奉を行っていた可能性が考えられる。2、内豎は、内裏から内裏外への使者とされることもあった。このような役割は大舎人にもみられる役割であり、先行研究でも内豎と大舎人との類似性が指摘されている。しかし節会における両者の役割には差異が見受けられ、内豎所の分析には両者の性格の違いを把握する必要がある。これについては現在検討途中である。3、内豎所は、その前身機関の成立が蔵人所の成立以前に遡ること、別当に大臣・近衛中将・六位官人が任命される所であることから、本来は蔵人の指示を必要としない所だったと推測される。しかし、少なくとも10世紀以降、蔵人の指示を受けたという記載が多くみられ、内豎所が蔵人所の機能拡大の影響を受けていたことが確認される。 その他、東京大学史料編纂所・国立公文書館へ出かけ、内裏における諸司の供奉について詳しい記述がある『禁秘抄』や『禁腋秘抄』などの写本調査を行った。
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