2010 Fiscal Year Annual Research Report
ブナ・イヌブナの更新戦略の機能的な差異に関する研究
Project/Area Number |
09J04716
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石塚 航 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 分布 / ブナ属2種 / デモグラフィー |
Research Abstract |
本研究で対象とする樹木2種は、研究対象地において局所的なすみわけをして個体群を維持している可能性があり、それらが個体群の持続性に及ぼす影響、また、それらを実現させている進化的プロセスの種間差や相互作用について解明するため、現在詳細な調査・解析を行っている。 秩父山地ブナ・イヌブナ天然林(標高1,200m)の実生調査区では、今年度までに全実生追跡調査を継続しており、今回その時系列に沿った実生消長データを取りまとめた。これまでに申請者によって、この調査地の地形条件や環境条件、また母樹量といった、実生多寡に影響を及ぼしうる要因が調べられており(GISにおいてデータベース化している)、これらの要因をもとにして、実際に実生の多寡がどのように決まり、どの程度のばらつきが生じうるものなのか、加えてそこに種間差が存在するか、また時系列に沿ったデモグラフィーには種間差があるか、といった解析が行われた。とくにイヌブナにおいて集中型の分布構造が明らかになり、初期密度が地形要因に規定されている可能性が示唆された。逆にブナの空間分布に明瞭なパターンはなく、ジェネラリストとしてのふるまいが示された。しかし、実生期のデモグラフィーからは、ブナの頑健性が弱いことが示され、ブナは実生発芽後の生残プロセスにおいて密度・分布が規定されていることが示唆された。これらのことより、ブナとイヌブナの2種は異なったフェーズに更新の最適条件があるということが考察され、2種の局所的なすみわけを考える上で重要な情報となると考えられた。同時に、成木と実生との干渉作用もある程度検出されており、持続的な2種の優占林維持に関わっている要因であることが推察され、たとえば菌害といった要因などを深く研究していくことの必要性も示唆された。
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Research Products
(2 results)