2009 Fiscal Year Annual Research Report
自己の経験と他者の行動の観察に基づく行動選択の脳内機構
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09J04742
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 今日子 The University of Tokyo, 医学部附属病院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 前頭葉内側面 / 細胞外記録法 / 自己と他者 / 前補足運動野 / 帯状皮質 |
Research Abstract |
社会生活を送るうえでは、他個体と接することが不可欠で、この際脳は相手の行動や意図を処理する必要がある。ミラーニューロンシステムは、相手の行動を自分が行動するときの回路を使って処理することで、他者の行動理解において大きな働きをしていると考えられている。しかし、自分の行動と相手の行動を分けて処理するシステムも存在するはずであり、私達はその脳内機構につき研究を行っている。2頭のニホンザルがテーブルをはさんで向かい合い、報酬を得るためにボタンを選択して押すというタスクをトレーニングし、その際の前頭葉内側面の神経細胞の活動を3頭のサルから記録した。具体的には、pre-SMA、SMA、rostral cingulate motor areaを含む領域の計1077個の神経細胞の活動を記録した。同時にサルの眼球運動および右前肢と体幹の筋電図も記録した。前頭葉内側面には、自己の運動(右前肢によるボタン押し)に関連して活動する神経細胞だけでなく、自己の運動および他者の運動の観察の両者に関連して活動する神経細胞(すなわち、ミラーニューロンに似た特性を持つもの)、さらには他者の行動の観察のみに関連して活動するという非常に興味深い特性を持つ神経細胞が存在した。これらの3タイプの神経細胞は、この領域内では混在するように存在していた。3頭のうち1頭は、自己の選択エラーの後は正せるが、相手の選択エラーの後は正しいボタンを選択できず、他者の行動の処理に欠陥があると考えられたが、このサルには相手の行動の観察時に活動する神経細胞がほとんど見られなかった。前頭葉内側面のこれらの神経細胞は、自己の行動および他者の行動の処理に関与していることが示唆された。
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Research Products
(1 results)