2009 Fiscal Year Annual Research Report
中国古代贈与交換史の研究―「貨幣経済」と「贈与交換」の関係を中心に―
Project/Area Number |
09J04757
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柿沼 陽平 Waseda University, 文学学術院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中国古代 / 秦漢時代 / 貨幣 / 塩鉄 / 専売制 / 後漢 / 三国 / 晉 |
Research Abstract |
本研究は、「中国古代に貨幣経済が急成長する中で、なぜか同時に贈与交換への世論も高まってゆく過程」に注目し、その具体的過程および社会的背景を解明しようとするものである。 上記の研究課題を達成するにあたり、私はまず、前年度までに行なってきた自身の中国古代貨幣経済史研究を回顧し、殷周時代から前漢武帝期に至るまでの経済状況に関する既出拙稿を整理した。その上で本年度はまず、当該分野に関する先行研究を改めて整理し、従来の諸研究を網羅的に紹介するとともに、自らのこれまでの研究がどのような意義をもつのかを確認した(論文「中国古代貨幣経済史研究の諸潮流」)。つぎに前漢武帝期における貨幣経済の状況を闡明し、それが具体的にいかなる意義を有するのかを検討した。また前漢貨幣経済における国家的塩鉄支配のあり方にも言及し、それを通じて前漢貨幣経済における布帛の貨幣的意義および、それを通じた国家の専制的支配のあり方を明らかにした(論文「戦国秦漢時代における塩鉄政策と国家的専制支配」)。以上をふまえ、私は上記の諸論文を含む博士論文「中国古代貨幣経済史の研究」を早稲田大学に提出し、2009年10月に学位を授与された。PD申請時にものべたが、これは本研究「中国古代贈与交換史の研究」をする上での前提条件をなすものである。 つぎに私は、一般に貨幣経済が衰退したとされる後漢時代以降の経済分析に着手した。すなわち、論文「後漢時代における貨幣経済の展開とその特質」で後漢時代の、学会報告「漢魏時代における貨幣としての布帛(英語)」で三国時代の、学会報告「晉代貨幣経済的構造與其特色(中国語)」で晉時代の貨幣経済の存在にそれぞれ言及し、各時代の貨幣経済が有する構造と特質を闡明した。来年度はこれらをふまえ、いよいよ贈与交換史研究に取り組む予定。
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