2010 Fiscal Year Annual Research Report
中国古代贈与交換史の研究―「貨幣経済」と「贈与交換」の関係を中心に―
Project/Area Number |
09J04757
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柿沼 陽平 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中国古代 / 貨幣経済 / 秦漢時代 / 魏晉南北朝 / 非農業民 / 盗鋳銭 / 殷周時代 / 税制 |
Research Abstract |
本研究課題は、私のDC1の研究課題「中国古代貨幣史の研究-中国古代の「貨幣」に園する経済人類学的研究-」で解明した中国古代貨幣経済史の特質をふまえ、さらに中国古代の贈与交換のあり方を検討し、最終的に中国古代における貨幣経済と贈与交換の関係を解明することを目的とする。 以上の研究目的を達成するため、今年度は「優秀若手研究者海外派遣事業」に則り、一年間中国社会科学院歴史研究所に訪問学者として滞在し、まず中国古代貨幣経済史研究の成果が中国側にどう評価されるかを確認した。そこで中国で中国語による学会発表を四回行い、中国の学術雑誌『中国銭幣』と『簡帛』に中国語で三本の論文を書き、多くの意見を頂戴した。それをふまえ、DC1とPDの研究成果の一部を総括し、『中国古代貨幣経済史研究』(汲古書院、2011年)として上梓し、研究成果の社会的還元を図った。これは中国古代において貨幣経済がいつどのように展開し、それがいかなる構造的特質を有していたのかを検討したもので、中国古代貨幣経済について検討した専門書としては日本初のものである。 同時に、贈与交換史研究へ移行するための最後の基礎固めとして、魏晋南北朝貨幣経済史の研究を推進し、関連論文二本を『東方学』と『東洋学報』で発表した。これは、従来その存在が疑われてきた魏晋南北朝貨幣経済の存在を立証したものである。これはPD申請時の私の仮説が立証されたことを意味する。以上をふまえ、次年は戦国秦漢魏晋南北朝贈与交換史研究を行い、それと貨幣経済との関係を改めて模索する予定である。
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