2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J04832
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
村上 徳樹 大谷大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 自己認識 / ケードゥプジェ / ゲルク派 / 『心闇の払拭』 / チベット |
Research Abstract |
申請者は博士論文において、ゲルク派の開祖ツォンカパ・ロサンタクパの高弟であり、ゲルク派を代表する思想家であるケードゥプジェ・ゲレクペルサンポ(以下ケードゥプジェ)の唯識思想と自己認識解釈の研究をおこなった。その結果、彼の自己認識理論や唯識思想における認識理論についてある程度の結論を得ることができた。その成果を踏まえ、本研究では、後伝期チベットにおいて自己認識理論がどのように理解されてきたかという問題を思想史的観点から研究し、特にゲルク派の解釈における独自性はどこにあったのか、あるいはまた、彼等の解釈がチベット仏教思想史上においていかなる意義を有していたのかを検討するとを目的としている。 その研究成果として平成23年度は、『真宗総合研究所紀要』29号に「『ケードゥプジェ著『七部論理学書荘厳、心闇の払拭』「自己認識知覚」訳注研究」を公表した。本論はケードゥプジェの論理学に関する代表作である『七部論理学書荘厳、心闇の払拭』(以下『心闇の払拭』)のうち、自己認識知覚を扱った箇所の訳注研究である。 ケードゥプジェは『心闇の払拭』において仏教論理学上のトピックを自身の視点からまとめて記述しているが、その記述の仕方として敵者の説を批判しながら自説を確立するという方法をとっている。従って、『心闇の払拭』は彼が活躍した当時、いかなる解釈が問題となっていたかを知る上で有用な著作であると考えられ、同書を研究することは思想史を構築する上で重要な作業である。本研究は同書のうちの自己認識知覚を扱う箇所の訳注研究であるが、これまで学会において同箇所が翻訳されたことはなく意義ある仕事であると思われる。
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Research Products
(2 results)