2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヤンゴン都市社会史研究-都市空間の形成と民族間関係-
Project/Area Number |
09J04885
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長田 紀之 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 植民地都市 / ビルマ / ミャンマー / ラングーン / ヤンゴン / 東南アジア / 歴史学 / 公衆衛生 / 警察 / 華橋 / 華人 |
Research Abstract |
イギリス、ロンドンにおいて3カ月間の文書館調査を行った。具体的には、まず英国図書館(Britishi Library)やウェルカム・インスティテュート(Welcome Institute)において、植民地期の行政部門別(市庁、市警、都市開発局、市衛生局など)の公刊の年次報告を網羅的に閲覧し、各種の通時的統計表を作成した。こうした基礎作業はヤンゴンの都市行政の全体像を把握するために不可欠である。 また英国図書館所蔵のアジア太平洋アフリカ・コレクション(Asia, Pacific and Africa Collections)においてその他の関連する公刊・未公刊資料の捜索と収集も広範に行った。とくに今回は植民地期ヤンゴンにおける華人社会の統制に関する資料を収集し、その成果を愛知大学での研究会で口頭発表した。インド人とビルマ人を主な構成要素とする植民地期ヤンゴンにおいて、華人街の存在は異彩を放っており、とくに華人犯罪者とその摘発を困難にする華人結社の存在がラングーン市警によって問題視されていた。20世紀初頭に海峡植民地の華人統制策をモデルとした制度作りが模索され、華人諮詢局の設立とイギリス臣民籍をもたない者を追放可能とする「1864年外国人法」の適用がなされた。しかし、華人社会の規模が小さかったために、海峡植民地ほどには華人社会に対する行政的介入が徹底されず、追放政策にも華人諮詢局に名を連ねる有力華人たちの意向がそのまま反映されるような間接統治の性格が色濃く残ることになった。従来、ヤンゴンの華人社会について歴史的に検討した研究はほぼ皆無であり、一次史料に基づいて華人社会統制のための制度移入とその換骨奪胎の過程を明らかにしたことはヤンゴン都市社会史の解明のうえでも意義のあることである。
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Research Products
(3 results)