2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヤンゴン都市社会史研究-都市空間の形成と民族間関係-
Project/Area Number |
09J04885
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長田 紀之 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 植民地都市 / ビルマ/ミャンマー / ラングーン/ヤンゴン / 東南アジア / 歴史学 / 公衆衛生 / インド人移民 |
Research Abstract |
昨年と同様に、イギリス、ロンドンにおいて3カ月間の文書館調査を行った。具体的には、英国図書館(British Library)やウェルカム・インスティテュート(Welcome Institute)において、植民地期の行政部門別(市庁、市警、都市開発局、市衛生局など)の公刊の年次報告を網羅的に閲覧し、各種の通時的統計表を作成した。英国図書館においてはその他の関連する公刊・未公刊資料の捜索と収集も広範に行った。こうした基礎作業はヤンゴンの都市行政の全体像を把握するために不可欠である。 とくに植民地期ヤンゴンにおける衛生政策の展開については、関係行政部門の未公刊文書を読解することにより、政策決定の過程を詳細にあとづけ、そうした政策の背後にある行政官たちの認識について明らかにした。すなわち、インドの一部として植民地化されたビルマは、インドからの無制限の労働力流入に依存して経済発展を遂げたが、他方でそうしたインド人移民の存在は行政官たちによって首都ヤンゴンにおける伝染病の流行など衛生上の問題と結び付けて捉えられた。こうした問題に対処するため、ヤンゴン港におけるインド人移民に対する衛生管理制度が20世紀前半を通じて形成された。これは、政体上はインドの一部であったビルマが、インド本土との間に「国境」を設け、それを越える人の移動を管理しようとする動きの萌芽であったと考えられる。この研究成果については、2010年7月にフランスのマルセイユで開催された国際ビルマ研究会議において報告を行った。報告内容は英文で文章化され、プロバンス大学東南アジア研究所の紀要であるMoussons第16号(2011年9月発刊)に掲載されることが決まっている。
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Research Products
(3 results)