2009 Fiscal Year Annual Research Report
叙述類型論、語彙意味論、及び両者のインターフェースの研究
Project/Area Number |
09J04899
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮本 大輔 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 叙述類型論 / 語彙意味論 / 状態変化 / 「なる」構文 / 事象のスケール性 / 不定目的語削除 |
Research Abstract |
平成21年度は、当初の研究計画に基づき、叙述類型論、語彙意味論の観点から、主に英語と日本語を分析対象として研究を行った。具体的な研究成果としては、第一に、修士論文の一部をまとめ直して、日本語文法学会第10回大会において、「状態変化を表す『なる』構文の意味分析-叙述類型論の観点から-」というタイトルで口頭発表を行った。この口頭発表では、変化動詞「なる」を主要部とする「なる」構文の意味を適切に捉えるためには、述語の語彙的意味のみに基づく従来の語彙意味論的アプローチでは不十分であることを指摘し、叙述類型論の観点を導入し、とりわけ、非状態述語による派生的な属性叙述の存在を積極的に認めることが不可欠であることを明らかにした。第二に、今年度から本格的に開始した、英語の不定目的語削除(indefinite object deletion)についての研究をまとめ、日本言語学会第139回大会において、「事象のスケール性に基づく英語不定目的語削除の分析」というタイトルで口頭発表を行った。この口頭発表では、動詞の語彙的意味の違いのみに基づく語彙意味論的アプローチでは正しく予測することが不可能な不定目的語削除現象が存在することを明らかにする一方で、叙述類型論的観点からそのような例外的観察事実をすべて属性叙述という叙述類型の特殊性によって説明しようとする先行研究にも問題点があることを指摘し、語彙意味論、叙述類型論双方の限界を克服し、英語の不定目的語削除現象を例外なく統一的に説明できる分析を提示した。今年度は、上記の2つの口頭発表により、言語研究における叙述類型論と語彙意味論の有用性を示したと同時に、両者が本質的に抱える問題点も明らかにしたという点で、来年度以降の研究の礎を築くことに成功したと言える。
|
Research Products
(2 results)