2010 Fiscal Year Annual Research Report
叙述類型論、語彙意味論、及び両者のインターフェースの研究
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09J04899
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮本 大輔 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 叙述類型論 / 語彙意味論 / 中間構文 / 形容詞的「タ」形 |
Research Abstract |
平成22年度は、博士論文の中心トピックとする予定であり、叙述類型論、語彙意味論双方の観点を導入することが分析の上で非常に重要であると考えられる中間構文についての考察をさらに深めつつ、中間構文以外の様々な言語現象にも広く関心を持って積極的に分析を続けること、そして、平成21年度に学会で発表した日本語の「なる」構文、及び英語の不定目的語削除についての研究も博士論文の内容と関連付けて学術論文としてまとめることを目標としていた。以下、その目標の達成状況についてまとめる。 まず、中間構文に関しては、平成21年度までは英語の現象を中心に観察していたが、平成22年度は、ドイツ語やスペイン語などのヨーロッパ諸語の研究において「中間構文」という名称で呼ばれている、再帰代名詞が用いられた属性叙述構文のデータを集め、対照言語学・言語類型論的な観点も取り入れた上で、属性叙述という叙述類型と特殊な言語形式との関連の普遍性と多様性の双方を追及するための礎とした。 平成21年度までとは異なる新たな研究トピックとしては、意味論における出来事の存在の含意の有無という観点から、日本語の「ゆでた卵」、「死んだ魚」といった表現において被修飾名詞句の指示対象の状態を叙述していると言われている動詞連体修飾「タ」形(「形容詞的『タ』形」)に着目し、形容詞的「タ」形はデフォルトでは先行する出来事の存在を含意し、語彙的に対応する形容詞が存在しない場合に限って臨時的に語彙的ギャップを埋める形で出来事を含意しない解釈が許されるという分析を提示した。この研究成果は、国立国語研究所において行われたMLF2010で平成22年7月11日に発表し、聴衆から貴重な意見、コメントをいただいた。
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Research Products
(1 results)