2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J04912
|
Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
紫加田 知幸 The Graduate University for Advanced Studies, 先導科学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 光受容体 / シグナル伝達 / 生活環 |
Research Abstract |
世界中の沿岸域において赤潮は水産業に甚大な被害をもたらし続けている。赤潮の原因となる植物プランクトンはその生活環の中に休眠ステージを有しており、それが発芽すると赤潮の元タネとなることが指摘されている。発芽を誘導する環境条件として光が重要であることが知られているが、その光受容・信号伝達機構は不明である。そこで、私は発芽に光を要求する海産珪藻Leptocylindrus danicusを用いて研究を実施した。今年度は分子メカニズムを探求するための基礎知見を得るために、人為的に形成・成熟させた休眠胞子を用いて、発芽に要求される照射時間および有効な光波長を特定した。まず、休眠胞子を5段階の照射時間(0,4,8,12,14時間)と5段階の光強度(50,90,200,390,450μmolm^<-2>s^<-1>の組み合わせ条件で光を照射した後、発芽を計測した。その結果、いずれの強度においても8時間以下の照射では照射時間が長いほど発芽率が上昇したが、それ以上の照射時間では発芽率の上昇は認められなかった。次に、休眠胞子を8段階の光波長(365~740nm)と3段階の光強度(10,20,50μmolm^<-2>s^<-1>)の組み合わせ下で培養して発芽を計測した。その結果、ほとんどの波長条件下で強度に依存して発芽率は上昇し、波長470nmの青色光および波長660nmの赤色光下で発芽率のピークが認められた。得られた休眠胞子の反応スペクトルが光合成の作用スペクトルと類似していたので、休眠胞子を光照射中または光照射後に光合成阻害剤DCMU(ジクロロフェニルジメチル尿素)を投与し、発芽を計測した。その結果、光照射中にDCMUを投与した場合にのみ発芽が著しく阻害された。以上の結果より、本種の休眠胞子の発芽率は光の照射時間、波長および強度によって決定されており、発芽の光センシングにおいて光合成系が関与することが示された。
|
Research Products
(6 results)