2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J04918
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
南本 徹 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 比較言語学 / 印欧語 / ギリシア語 |
Research Abstract |
本年度の大きな成果は、印欧諸語に関する知識の獲得である。本年度の研究計画に述べられているように、研究の第一年度である本年度は、研究の基盤となる印欧諸語に関する知識の獲得が重要な目的であった。そこで、報告者は二度の海外渡航などの機会を活用して知識の獲得に努めた。ひとつは米国でのアメリカ言語学会夏期講座であり、この場では、報告者がこれまで学習の機会を得られなかった言語であるトカラ語をはじめ、印欧比較言語学において重要な情報源となる言語について、知識を深めることができた。もうひとつは米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校で開かれた印欧語学会への出席で、これは最先端の研究成果に触れる機会となった。また、この他にも、受入研究者である吉田和彦教授の尽力により、京都大学でゲルマン諸語に関する集中講義が開かれた。これらによって、報告者は印欧語研究の柱となる主要な語派をほぼ全て学習する機会を得たことになる。このような基礎的知識は、論文などの著作で発表できるような成果にすぐさま結びつくものではないが、今後の研究の基盤として重要な価値を持つものである。したがって、本年度の研究の主要な目標である、印欧諸語についての知識の吸収は、よく実施できたと思われる。 また、ギリシア語碑文資料の読解については、第二年度以降の研究内容として計画していたが、本年度において小規模ながら実施することができた。ここで対象としたのはギリシア語テッサリア方言である。ギリシア語のいくつかの方言には動詞の特殊な形式が存在することが知られているが、テッサリア方言では特殊な形式が新しい碑文に、通常の形式が古い碑文に確認されていることから、この特殊な形式が歴史的にどのような変遷を辿ったのかを、テッサリア方言を手掛かりに解明できることが期待される。今年度の調査は部分的であったので、次年度以降も引き続き碑文資料の読解を進める必要がある。
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