2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J04918
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
南本 徹 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 印欧語 / 比較言語学 / 古代ギリシア語 |
Research Abstract |
今年度の研究は、年度前半に京都大学でおこなった研究と、年度後半にカリフォルニア大学ロサンゼルス校でおこなった研究との二つに大きく分かれる。今年度の前半には、前年度に引き続きギリシア語テッサリア方言の碑文を読み、その中から特に動詞の語形を収集する作業をおこなった。また、七月には、スロバキアで開かれた若手研究者向けの国際学会において研究発表を行い、主にヨーロッパの研究者との意見交換の機会を得た。この成果は、後述する米国渡航の間にさらに吟味を加えた結果、審査に合格し、集会のproceedingsに掲載される予定である(発行時期は未確定)。 年度の後半(九月以降)には、米国のカリフォルニア大学ロサンゼルス校において、Brent Vine教授の指導のもと、印欧比較言語学全体に関連するいくつかの授業に出席する一方、さらにギリシア語方言の碑文資料の読解を進めた。その結果、2000年代に入ってから新しく公刊されたテッサリア方言の碑文の中に、有意義と思われる語形を発見した。報告者の注目している「アイオリス風屈折」は、thematicとathematicの語形がパラダイム内に相補分布していることが大きな特徴のひとつである。当然、そのことを確実に知るには、その両方の語形が碑文資料に現れることが必要であるが、これは碑文資料の量的な制約のため容易でない。その中で、「~し続ける」を意味する動詞は、三人称単数でthematicの語形を持つことが既に知られていた。そして、今回の報告者の語形収集の中においては、この動詞が三人称複数でathematicの語形を持つことが確認された。今後、このことが持つ意味を、この動詞の歴史的背景や他の方言での状況とあわせて検討する必要がある。 年度の後半(九月以降)には、米国のカリフォルニア大学ロサンゼルス校において、Brent Vine教授の指導のもと、印欧比較言語学全体に関連するいくつかの授業に出席する一方、さらにギリシア語方言の碑文資料の読解を進めた。その結果、2000年代に入ってから新しく公刊されたテッサリア方言の碑文の中に、有意義と思われる語形を発見した。報告者の注目している「アイオリス風屈折」は、thematicとathematicの語形がパラダイム内に相補分布していることが大きな特徴のひとつである。当然、そのことを確実に知るには、その両方の語形が碑文資料に現れることが必要であるが、これは碑文資料の量的な制約のため容易でない。その中で、「~し続ける」を意味する動詞は、三人称単数でthematicの語形を持つことが既に知られていた。そして、今回の報告者の語形収集の中においては、この動詞が三人称複数でathematicの語形を持つことが確認された。今後、このことが持つ意味を、この動詞の歴史的背景や他の方言での状況とあわせて検討する必要がある。
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