2009 Fiscal Year Annual Research Report
糸状菌のストレス応答シグナル伝達経路の下流で制御される転写調節因子の機能解析
Project/Area Number |
09J04921
|
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
山下 和宏 Toyo University, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 糸状菌 / アカパンカビ / MAPキナーゼ / ストレス応答 / 分生子形成 / プロテオーム |
Research Abstract |
糸状菌のストレス応答シグナル伝達経路は,植物病原菌の殺菌剤感受性や病原性に関与している重要な経路である。これまでに研究代表者らは,アカパンカビを用いて,同経路がストレス応答だけでなく,糸状菌に特有である無性生殖に関わることを明らかにした。また,本経路の下流の転写因子としてCREB型の転写因子を同定し,さらに未知の転写因子が存在する可能性を報告している。本研究では,シグナル伝達経路下流の転写因子の機能を明らかにするために,下記の研究を実地した。 1.転写因子ATF-1はcAMP応答配列に結合するので,ストレス応答MAPキナーゼだけでなく,分生子形成に関与するプロテインキナーゼAによっても制御される可能性がある。これを検証するために,本年度は,ATF-1のリン酸化状態を電気泳動移動度の変化として検出する実験系を構築した。 2.ストレス応答シグナル伝達経路の下流で,殺菌剤や浸透圧の応答を担っていると推定される転写因子を同定するために,転写因子の破壊株ライブラリーをスクリーニングしたが,os-2(MAPK)変異株のような浸透圧感受性および殺菌剤耐性を示す株は得られなかった。現在,シグナル伝達経路の下流でATF-1非依存的に誘導される遺伝子のプロモーター領域に結合するタンパク質の同定を試みている。 3.atf-1破壊株は,分生子の発芽率が顕著に低下する。ATF-1は分生子特異的カタラーゼの発現に必須であったことから、atf-1破壊株は分生子のタンパク質が野生株とは異なると考えられる。atf-1破壊株と野生株のプロテオームを比較したところ,atf-1破壊株では分生子特異的タンパク質のほとんどが減少していた。これらのタンパク質には,酸化的ストレスに応答する遺伝子が多く見られたことから,atf-1破壊株の分生子の発芽率の低下は,分生子特異的タンパク質の減少が原因であることが示唆された。
|