2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J04931
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 裕文 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ミリ波 / 超伝導 / 電波天文学 / 雑音源 |
Research Abstract |
本研究の圏的はマイクロ波帯からミリ波帯の高周波コンポーネントの高精度な特性評価を可能にする超伝導トンネル接合(以下SIS接合)を用いた雑音源を開発することである。 平成23年度は前年度に設計したミリ波帯ノイズソースの特性評価を行った。設計した超高感度SISミクサを用いたヘテロダインシステムを用いてショットノイズの検出を試みた結果、100GHzでのトンネル接合からのショットノイズの初検出に成功した。SISノイズソースの等価温度を見積るために、既存の熱雑音源に対するSIS受信機の応答と比較した結果、理論が予測する値の8割程度の等価温度をSIS受信機が検出していることが分かった。 またショットノイズの特性を詳細に調査した結果、ノイズソースの出力はバイアス電圧に対して単調に増加したが、理論が示すような線形とはならなかった。そのような特徴の一つとして、出力電力-電圧曲線の10mV付近に不連続があった。この不連続は電流-電圧特性にも見られた。物理温度依存性の振る舞いからこれは配線にweak linkがあるためと考えられる。また高いバイアス電圧で飽和傾向が見られた。この飽和傾向は電流電圧特性にも見られた。これは高いバイアス電圧を接合にかけると、接合で生じたジュール熱により接合周辺の超伝導性が破壊され、そこで電圧降下が起こっているためと考えられる。超伝導性が破壊された領域、温度が高くなっている領域では高周波損失も生じるため、電圧-電力特性の飽和的な振る舞いを強くするように働く。 本研究で100GHz帯においてトンネル接合からのショットノイズを初検出し、その特性に関して詳細に調査したことにより、天文学分野や工学分野での実用への見通しが立った。この原理的に新しいノイズソースを用いることにより、これらの分野での新たな進展も期待される。
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Research Products
(1 results)