2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J04946
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
大石 侑香 Tokyo Metropolitan University, 人文科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 文化人類学 / 社会人類学 / ロシア / シベリア少数民族 / ポスト社会主義 / 社会変容 |
Research Abstract |
本研究課題は、ソ連崩壊の生産・流通の実践や社会・経済的諸関係を明らかにし、ポスト社会主義社会のミクロな側面を考察することによって人類学的なポリティカル・エコノミー論を再構築することである。2009年度は、これに関する先行的研究を分析し、資本主義経済システムとポスト社会主義システムの接合状況を検討することを目標とした。 旧ソ連時代、外国人研究者がロシアで人類学的調査を行うことは困難であったが、90年代以降は現地調査が可能になり、欧米の研究者による研究が蓄積されるようになった。まず、このような研究を重点的に精査した結果、人類学者による同時期の経済研究を学説史的にみた場合、i)90年代初期の移行論批判、ii)90年代後半の移行論批判の実証的研究、iii)2000年代以降のグローバル・イシューという観点の導入という三つのアプローチに区別可能であることを明らかにした。とくにiii期には、モデル化・理論化が行われるようになるとともに、国家の体制転換という枠組みを越えたよりマクロな経済の影響や先住民の権利運動や環境問題などのグローバルな価値観の影響についてテーマが拡大していく。このような先行研究は変化する集団・社会組織そのものに注目する研究が多いものの、社会的変容過程を促す主体の考察が不十分であることが確認できた。そして、内外のシステムを接合する役割を担う中間的アクターを分析対象とする視点に立ち、iiiの段階の地下資源開発と少数民族の諸関係を事例とした民族誌を考察した。その結果、ポスト社会主義社会において、i)資源所有や資源輸出については、未だ中央政府の権限が強く、変化への方向性は抑制されていること、またii)資源の所有問題について欧米のNGOなどの外的アクターは未だ大きな影響力は持ち合わせていないこと、iii)少数民族自治政府が地下資源の利権を有する場合、中間アクターとしての役割を担っているという知見を得た。
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Research Products
(2 results)