2009 Fiscal Year Annual Research Report
溶融押出法による屈折率分布型プラスチック光ファイバの屈折率分布制御
Project/Area Number |
09J04953
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
浅井 誠 Keio University, 理工学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 相互拡散係数 / 低分子濃度依存性 / 分子動力学法 / 高分子 / ガラス転移 / 結晶秩序 / フラストレーション / 動的不均一性 |
Research Abstract |
1、溶融高分子中における低分子拡散係数の濃度依存性の詳細な発現メカニズムの解明を行った。我々は計算物理学的手法と実験的手法の二通りの研究を行った。まず、分子動力学計算による計算機実験で溶融高分子中における低分子のシミュレーションを作成し、計算を行った。その結果、溶融高分子中の低分子拡散では従来の理論モデルである自由体積理論が破綻する可能性があることを発見した。これは溶融状態における高分子鎖の運動の特異性に起因しており、これが拡散係数の特異な濃度依存性を発現させている。さらに我々はシミュレーションから予測された特異な現象を実際の実験室実験でも確認するために、PMMAとDPSおよびDBTを用いた拡散実験を行い、予測された現象を見出すことに成功した。また、DPSとDBTにおいて拡散性の顕著な相違が確認された。我々は現在、この相違が我々の理論モデルの中でどのように解釈しうるかについて調べるために、活性化エネルギーを測定するための拡散実験を行っている。 2、ガラス転移理論の研究 粗視化高分子モデルを用いた計算プログラムを作成し、高分子ガラスの分子動力学的研究を行った。温度および圧力を制御しながら溶融状態から冷却させ、ガラス状態を生じさせた。ガラス転移を解明する最大のカギは、背景に存在する動的不均一性の発現にあるとされている。我々の系においても動的不均一性はガラス転移近傍になるについて、十分に発現していることを確認した。さらに、ガラス転移近傍になると高分子配列にわずかな秩序が形成されることを発見した。(この秩序構造を中距離結晶秩序と呼ぶ。)我々は、中距離結晶秩序の相関長が温度低下に伴って著しく大きくなることも見出した。さらに、中距離結晶秩序と動的不均一性によい相関があることを発見した。これはガラス転移を、結晶化へのフラストレーションとして捉えられること明確に示した重要な結果である。
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Research Products
(3 results)