2009 Fiscal Year Annual Research Report
フィンランドの家族介護とイエ・親族―福祉国家における老いの人類学的研究―
Project/Area Number |
09J04959
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
門田 絵里香 (高橋 絵里香) National Museum of Ethnology, 研究戦略センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 国際情報交換 / エイジング / 地域福祉 / フィンランド / 文化人類学 / 民族誌 |
Research Abstract |
初年度にあたる平成21年度は、フィンランド西南部のヴァルシナイス・スオミ地方における家族介護の状況を把握する短期間の予備調査を行う一方で、これまでのフィールドワークの成果を学会で発表した上で、論文として投稿していった。 7月26日~9月8日の約1ヵ月半の期間、フィンランドに滞在した。この間に収拾した資料は主に、(1)ヴェスト・オーボランド町の高齢者福祉に関連する自治体の行政資料、(2)トゥルク大学、オーボ大学の図書館に所蔵されている北欧型福祉国家研究の書籍、論文、フィンランドの諮問委員会答申等の二種類である。また、ヴェスト・オーボランド町では家族介護の状況に関する予備的調査を行い、社会サービスを受給している高齢者たちの過去の居住・移住歴に関する網羅的調査を実施したことで、今後の論文の基礎となる重要な資料をえることが出来た。海外調査の結果は、来年度以降の本調査に向けた布石であると同時に、今年度に執筆した論文に反映されている。 今年度は、2本の論文と1本の書評論文を学会誌に発表した。これらの論文では、人類学の古典的著作と社会福祉思想の関係を明らかにする文献研究を行う一方で、フィンランドでの現地調査を元に、老いと身体変容、そして地域福祉の相互連関性について論じた。これは、近年日本で活況を呈している老年人類学という領域に対して理論的貢献を果すものである。 さらに、フィンランドで開催されたヨーロッパ農村社会学会では、多くのフィンランド人研究者と活発な意見交換を行い、社会サービスの地域間格差、特に地方におけるサービスへのアクセス状況について有益な示唆を得ることが出来た。
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Research Products
(6 results)