2012 Fiscal Year Annual Research Report
フィンランドの家族介護とイエ・親族-福祉国家における老いの人類学的研究-
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09J04959
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
門田 絵里香 (高橋 絵里香) 東京大学, 東洋文化研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | エイジング / フィンランド / 家族介護 / 文化人類学 |
Research Abstract |
採用最終年度にあたる平成24年は、これまでの研究成果を単著としてまとめると同時に、フィンランド西南部のパルガス町の家族介護支援制度に関する集中的な実地調査を行った。 (1)出版物の概要 勁草書房から『老いを歩む人びと-高齢者の日常からみた福祉国家フィンランドの民族誌』と題する単著を出版し、これまでの研究成果をまとめた他、"Half Way Down to Solitude : Ageing as the Process of Engagement/Disengagement through Social Welfare in Finland"と題する初の英語論文がSenri Ethnological Studiesに掲載された。こちらは、老いという過程に内在する「社会的なもの」への志向性が地域福祉制度の中でどのように位置づけられているかを分析する実証的・理論的研究である。 (2)学会における研究発表の概要 日本文化人類学会で「家族/共同体における贈与・交換・共有-」と題する発表を行った。これはフィンランドにおける家族介護研究の土台となる、思想的背景についての文献研究をまとめたものである。 (3)現地調査の概要 2012年8月~9月および、2013年2月~3月に、フィンランド南西部の自治体パルガス町でフィールドワークを行った。自治体のホームヘルプ、訪問看護、および家族介護支援課のスタッフに同行し、支援制度の実体把握につとめると同時に、同行取材を通じて知り合った家族介護者たちへのインタビューを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究員は、採用最終年となる平成24年度において、活発に研究成果を発表しつつ、研究を進めてきた。初の単著・初の英語論文を発表し、一般社会や国外にむけて所為かを発信した。また、集中的な現地調査を行うことで、フィンランドにおいて現在進行形で整備されつつある家族介護支援制度の全貌を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はフィンランドにおける家族介護支援の認定過程について、より詳細なデータ採取を目指す。同時に、家族、行政関係者、NPOといった複数アクター間の分業体制に関する理論的な論文を発表するほか、日本ではあまり知られていない北欧型福祉国家の家族介護支援制度について一般社会に向けた発信に努めていきたい。
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Research Products
(3 results)