2009 Fiscal Year Annual Research Report
哲学の西洋性―ハイデガー・レヴィナス・デリダにおけるヘレニズムとヘブライズム―
Project/Area Number |
09J04960
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
江黒 史彦 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1
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Keywords | 現象学 / ハイデガー / レヴィナス / デリダ / 西洋性 |
Research Abstract |
報告者は、「哲学の西洋性-ハイデガー・レヴィナス・デリダにおけるヘレニズムとヘブライズム-」に関連した次のような研究を当該年度実施した。 まず、ハイデガー哲学とヘレニズム性、もしくはギリシャ性を解明するという研究目的に沿って、(1)ハイデガーによって、ヘレニズム的伝統に拮抗するものとして捉えられるキリスト教的存在神学の解釈を明確化し、そしてその問題に関連させることで、(2)ハイデガーが「存在」という問題圏をどのような文脈で問題にしているのかをより見通しのきくものにした。その上で、単なる言語の翻訳という以上の哲学的意味を持った、(3)ハイデガー哲学におけるギリシャ語なりギリシャ性の「翻訳」という概念を論じ、研究成果を発表した。以上のような研究は、単にハイデガー哲学を解釈するうえで重要であるばかりでなく、言語と思考の関係というより大きな哲学的問題に一石を投じるものである。 また、レヴィナス・デリダとユダヤ性という問題についても上記(3)と関連して論じることを試みた。そのためにまず(4)両者とハイデガー哲学との関連性を、ハイデガーのフランス哲学受容の文脈から明確化する一方で、更に(5)旧約聖書・ユダヤ哲学との関連で両者の思索の伝統的背景を明確化した。 以上のような研究によって、当初の計画通り「ヘレニズムとヘブライズム」というより大きな文脈に三者の思想を置くことで、従来は本人たちの相互言及や批判が文字通り解釈されることで、単なる三者の思想家間の対立や同調だと思われていたことが、実は対立という見かけとは違い同じ思考的装置を用いていたり、意見の一致の中にも重要な思想的差異が存在したりすることが明らかになった。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article]2009
Author(s)
江黒史彦
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Journal Title
「ヒューマニズム」について(解題)(『ハイデガー:生誕120年、危機の時代の思索者』所収)(河出書房)
Pages: 42-43
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