2011 Fiscal Year Annual Research Report
哲学の西洋性―ハイデガー・レヴィナス・デリダにおけるヘレニズムとヘブライズム―
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09J04960
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
江黒 史彦 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 現象学 / ハイデガー / レヴィナス / デリダ / 西洋性 |
Research Abstract |
報告者は「哲学の西洋性-ハイデガー・レヴィナス・デリダにおけるヘレニズムとヘブライズム-」という研究課題を三年間にわたって、研究した。具体的には、研究対象としている三人の現象学者の思考において、いかに「西洋的」と呼ばれる枠組みが各々の思考において顕在化してくるのかを研究してきた。 以上のような研究を通して、報告者が解明しようと試みていたのは、西洋哲学を内部から規定し境界づけている問いの特殊性と地域性を明らかにすることであった。そして最終的な研究の目的は、さらに、その研究を通して、どこから哲学的な問いを出発させれば、その問いの背景をなす「問いの地域性・特殊性」を自明化せずに、むしろその問いの内部で、問いの限界と境界を見定めることが可能となるような問題設定を行えるのかということに関して、哲学的問いの出発点を正しく見定めることであった。この課題に対する報告者の最終的な解答は、いたってシンプルである。それはまさしく広い意味で理解された「語る」という出来事に定位して哲学的な分析をはじめることであった。 そのような語りの様態から哲学的記述を開始することは、同時に「言語と意味」という大きな哲学的な問題圏に、現象学の観点から学的寄与を試みることでもあった。語りの様態の分析が「言語と意味」の問題に触れるのは、まずは端的に「語る」という行為が、たいていは、なにがしかの仕方で言語を伴って語る行為を意味しており、その意味で、語ることの様態の分析は、常に言語とその意味への考察と不可分なものだからである。しかし単に言語と意味の分析から問題を始めるのではなく、語る行為から分析をはじめることの必然性は、語るという行為そのものがその行為の只中で、「言葉を語り」「意味する」というこの事態を可能にしているという端的な事実にもとづくものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究課題に関する最終的な解答とそれを発展的に検討する見通しが立ったという点で、順調に研究が進展した。またその研究成果をより確かなものにするために、今後より多くの公刊論文を世に問うていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究から得られた「語り」の様態分析に関する知見に基づいて、今後はまず「声と眼差し」という問題圏を、語りの構成分析の位相のもとで取扱い、現象学研究への学的寄与を目指していく。その際に引き続き三人の哲学者(ハイデガー・レヴィナス・デリダ)を研究の対象とし、この三者の思考のもとで同問題圏がどのように取り扱われているかを検討する。
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Research Products
(2 results)