2009 Fiscal Year Annual Research Report
ボスニア系イスラム知識人の文芸活動(1878-1918)「民族」の創出と相克
Project/Area Number |
09J04963
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
米岡 大輔 Osaka City University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ハプスブルク帝国 / ボスニア・ヘルツェゴヴィナ / 知識人 / イスラム / 民族 / オスマン帝国 |
Research Abstract |
初年度の2009年度は研究課題に関して第一に、ボスニアで収集してきたイスラム知識人の文芸誌の考察につとめてきた。従来、彼らの文芸誌はボスニア人の民族性を確立しようとする「ボスニア民族史」の枠組みの中で分析されてきた。これに対して本研究では、(1)ハプスブルク帝国の統治体制、(2)オスマン帝国の体制変動、(3)ボスニアの他民族との関係性、といった3つの背景を軸に、同時代的な国際情勢のなかで彼らの活動を位置づけなおすことを試みた。その成果は、拙稿「ボスニア系ムスリム知識人の『民族』論-ハプスブルク帝国統治期を中心に-」『西洋史学』235号、2009年、38-57頁としてまとめられた。 第二に、イスラム知識人の活動の社会的背景を明らかにすべく、ハプスブルク帝国によるイスラム諸制度への統治政策の考察も進めた。その際、これまでの史料調査の継続として、2010年2月から3月にかけてウィーンに滞在し、オーストリア国立文書館において史料収集を実施した。その結果、ハプスブルク帝国によるボスニアでのイスラム統治に関する行政文書や1908年10月のボスニア併合をめぐるオスマン帝国との外交交渉に関する文書を入手することができた。次年度はこれらの史料の精読を進めると同時に、引き続きボスニア国立文書館での史料収集を実施する予定である。こちらの課題の部分的成果については、2009年6月に専修大学で開催された第59回日本西洋史学会の自由論題報告において、「レイス・ウル・ウレマーの任命権をめぐる攻防-ハプスブルク帝国統治とボスニアのイスラーム」という題目で公表した。 なお研究実施者は、以上の成果を博士論文「ハプスブルク帝国領ボスニア・ヘルツェゴヴィナにおけるムスリム知識人の『民族』形成」として提出した結果、2010年3月に文学博士の学位を取得した。
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Research Products
(2 results)