2009 Fiscal Year Annual Research Report
移民と新たなアメリカ労働運動-移民日雇いをめぐる多様な運動主体と地域コミュニティ
Project/Area Number |
09J04976
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
毛利 さとみ (惠羅 さとみ) Tohoku University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 移民 / 労働運動 / アメリカ / Migration / Labor movement / Worker center / Unionism / Day labor |
Research Abstract |
本研究では、アメリカにおける移民日雇い労働市場の拡大とその組織化に焦点を当て、労働組合側の運動とコミュニティにおける運動の双方を対象として、移民を包摂する新たな労働運動の社会的プロセスついて調査分析する。初年度では、第一に、特に建設住宅部門にかかわる労働組合や他の運動団体が発行する資料・文献の収集を行った。第二に、7~8月にワシントンおよびボストンにおいて労働組合ナショナルセンターの移民政策担当者およびに建設労組のリーダーに対する質的な聞き取り調査を実施し、またサンフランシスコにおいて地域労働評議会が組織する移民改革法案をめぐるフォーラムに参与観察するとともに主催者に聞き取り調査を行った。本調査の成果の第一点目は、建設関連の労働組合運動が置かれている構造的条件と近年における運動の先進的組織化事例の整理であり、保守的且つ官僚制的な労働組合の特徴を指摘しながら、1990年代以降、職種別労組が独自に実施している多様な戦略について古典的労働組合運動戦略の変容を明らかにした。第二点目は、カリフォルニアにおける「労働者センター」の運動の制度化とネットワーク形成の分析である。特にローカルレベルでの運動とナショナルレベルでの組織間連携枠組みの形成過程において、移民や第2世代の若者の運動主体が育成され、世代間の経験を架橋する新たなキャリア経路が組織間移動の中で構築されていることを発見した。第三点目は、近年の運動モデルである「社会運動ユニオニズム」の文脈における考察である。特に、今日の労働運動の政治的側面について、インフォーマル経済の拡大の一方での移民の市民権獲得をめぐる社会的排除との闘いという点から、「非合法」移民の組織化をメンバーシップの拡大と運動の正当性を目指す社会運動という今日的な境界再構築として捉える視点を提示した。本研究の成果はアジア太平洋杜会学会および日本社会学会において発表した。
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Research Products
(2 results)