2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J04992
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中尾 央 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 科学哲学 / 生物学の哲学 |
Research Abstract |
申請書に記述したように,一年目において,私は進化心理学におけるいくつかの立場・議論を検討した.具体的には修正された心のモジュール説,または言語とのアナロジーといった議論の整理・検討を行った.その成果は二つの論文「心のモジュール説の新展開-その分析と二重継承説との両立可能性-」「道徳と言語のアナロジー説の批判的検討-感情説との比較を通じて-」(後者は田中泉吏氏との共著)や国際生物学の歴史,哲学,社会学会における日頭発表において発表した.具体的な内容としては,進化心理学に批判的な論者(デヴィッド・ブラーやキム・ステレルニーら)の議論と,進化心理学を擁護する議論(クラーク・バレットやエドゥアルド・マセリーら)の議論を検討し,両者の中間に位置する立場を採用した.この検討により,進化心理学の問題点と,その立場を活かしうる道の一つを明らかにすることができたと言える.さらに,二年目に予定していた二重継承説やミーム論の問題についても,考察を開始している.その成果については,11月の科学哲学会において日頭で発表を行った.具体的には文化の変遷に関して生物進化とどこまで類似した議論が可能であるのか,この問いに関して進化可能性という視点から,二重継承説やミーム論の主張などに関して検討と整報を行った.文化進化についてはあまりまとまった議論がなされていないこともあり,このような体系的な検討も意義のあることだと思われる.
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