2009 Fiscal Year Annual Research Report
カントの超越論的哲学の成立と、その発展の解明―想像力を中心に
Project/Area Number |
09J05040
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永守 伸年 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超越論的哲学 / イマニエル・カント / 想像力 |
Research Abstract |
本研究はI・カントの超越論的哲学の成立と発展を、想像力の概念史研究を軸として明らかにすることを目的としている。申請書で示したように、平成21年度の研究目的は「カントの想像力がバウムガルテンの『美学』に根ざしつつ、超越論的哲学にあって独自の発展を遂げていることを示す」ことであった。そして研究方法としては(a)1770年代のカントの講義ノートの整理と読解、(b)そうした作業にもとづく超越論的哲学の成立過程の精査が提起されていた。報告者はこうした研究目的・方法にしたがいつつ以下のような研究をおこなった。(1)まず報告者は『形式と原理』(1770)から『純粋理性批判』(1881)にいたる講義ノートを整理しつつ、想像力を軸とする概念史研究を遂行した。具体的にはバウムガルテンの影響下にある『形而上学講義』を精査することで、想像力の「総合」の理論的発展が『純粋理性批判』の超越論的観念論の基礎にあることを示した。その成果は論文「総合の理論をときほぐす-『純粋理性批判』における想像力の多層的活動-」として『実践哲学研究』第32号に公表され、国内外をとおして希少な「想像力」の概念史研究としての意義を評価されている。(2)続いて報告者は『純粋理性批判』以降の想像力の発展、とりわけカント倫理学における想像力の働きについて検討してきた。具体的には(イ)『実践理性批判』の時点では想像力の活動は『純粋理性批判』の総合理論の枠内にとどまっていること、(ロ)しかし他方、『実践理性批判』は行為の図式の「象徴」ならびに「表出」といった論述において『判断力批判』における美感的想像力を予告し、これを要請すらしていることを明らかにした。この研究成果は「カントの道徳判断論-「判断の包摂モデルにそくして-」として関西倫理学会で口頭発表され、会場から高い評価を得ている。報告者は以上の研究成果に基づきつつ22年度以降も想像力の概念史研究を進める予定である。
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Research Products
(4 results)