2010 Fiscal Year Annual Research Report
コロイドによって安定化されたエマルションの構造とダイナミクス
Project/Area Number |
09J05097
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
廣瀬 雄一 首都大学東京, 大学院・理工学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 生体膜 / 有限サイズドメイン / 脂質二重膜 / 疎水鎖配向場 / 濃度ゆらぎ / ミクロ相分離 / パターン形成 / 組成の非対称性 |
Research Abstract |
生体膜は脂質二重膜構造によって細胞器官の内外を仕切っており、千種類にも及ぶ脂質分子や膜タンパク質、コレステロールなどから構成されている。近年、生体膜上において特定の成分の集合ドメインが存在することが報告されており、シグナル伝達などの生体機能との関連が期待されている。その一方でドメインの形成機構はまだ明らかになっておらず、膜面上における生体機能の物理的機構の解明には至っていない。本研究では上記の問題解明へ寄与することを目的として、脂質二重膜における新しいドメイン形成機構の提案を行った。具体的には、飽和脂質と不飽和脂質からなる脂質単層膜を考え、相分離の自由エネルギーに膜内の脂質組成場と脂質疎水鎖の配向場との結合効果を取り入れた。その結果上記の自由エネルギーによって、低温の場合には磁性薄膜やブロック共重合体と同様にミクロ相分離現象が記述され、高温の場合にはゆらぎの相関長と特徴的波数の二つの長さスケールを持つ濃度ゆらぎが記述されることが明らかになった。続いて、二重膜の膜間に働く相互作用に着目し、結合二重膜の自由エネルギーの提案を行った。まず、高温状態における二重膜の濃度ゆらぎの相関関数を解析的に得た。膜間の結合によって片方の膜からもう一方の膜にゆらぎが誘起され、特に二枚の膜で異なる特徴的長さを持つ場合には、結合によって小さな波数のピーク位置で強くゆらぎが誘起される。続いて、低温状態における二重膜の相分離過程を数値シミュレーションによって求めた。その結果、二つの膜で特徴的波数が異なる場合に、様々な新しいミクロ相分離パターンが得られた。以上の結果は、生体膜におけるドメイン形成のみならず、新しいパターン形成機構を提案した点において意義深く、実験的検証が必要である。
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Research Products
(4 results)