2009 Fiscal Year Annual Research Report
分裂酵母における低容量ストレス応答の分子機構の解明
Project/Area Number |
09J05146
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中條 萌絵子 Kyoto University, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 交差耐性 / ストレス応答 / HIRA |
Research Abstract |
本研究では、スクリーニングによって得られた交差耐性欠損変異株Aに着目して、その原因遺伝子を同定し、交差耐性におけるその遺伝子の機能を明らかにすることを目的としている。 まず遺伝学的マッピングを行い、変異株Aの原因遺伝子が存在する染色体を決定することにした。分裂酵母の3本の各染色体にマーカー遺伝子を持つ株と変異株Aを細胞融合させて二倍体を作製し、一倍体化を誘導した。得られた150株余りの一倍体細胞を解析し、各マーカーと変異株Aの表現型の相関を調べた結果、変異株Aの原因遺伝子は2番染色体上に存在することが明らかとなった。 次に分裂酵母ゲノムDNAライブラリーを用いた相補実験によって原因遺伝子を決定することにした。変異株Aが示すストレス感受性を利用して、その表現型を相補するプラスミドを探索したところ、2番染色体上の領域を含むプラスミドが得られた。このプラスミド上に存在していたslm9^+に着目し、変異株Aのslm9領域の塩基配列を決定した結果、遺伝子ORF内の1451番目のCが欠失することでフレームシフトが起きていることが見出された。 Slm9は複製非依存的なヒストンシャペロンとしてヌクレオソームの会合などに重要な機能を果たしていると言われるヒトHIRAのホモログである。分裂酵母にはHIRAのホモログとしてSlm9以外にHip1が存在する。 そこで、slm9^+遺伝子破壊株とhip1^+遺伝子破壊株を作製して、交差耐性の表現型を確認した。その結果、どちらも交差耐性に欠損を示すことが明らかとなった。また、複製依存的なヒストンシャペロンであるCAF-1の大サブユニットのホモログであるpcf1^+遺伝子破壊株では交差耐性が起こったことから、交差耐性にはヒストンシャペロンの中でもHIRAが特異的に関与している可能性が高いことが示唆された。これまでにHIRAのストレス応答における機能についての報告はされておらず、本研究において新規のストレス応答経路の存在が明らかになったものと考える。
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