2010 Fiscal Year Annual Research Report
近世日本の改革政治と為政者像―大名明君像の政治史的研究―
Project/Area Number |
09J05176
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小関 悠一郎 東北大学, 東北アジア研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 明君録 / 上杉鷹山 / 米沢藩 / 細川重賢 / 明君像 / 学問と政治 / 藩政改革 / 政治意識 |
Research Abstract |
(1)明君録の悉皆調査:18世紀後半の「明君」に強い関心を持った民間人中島屋専助の意識と行動を掘り起こし、細川重賢・上杉治憲明君録の現存写本悉皆調査で得た知見と併せて考察した。これにより、これまでほとんど解明されてこなかった近世日本における民衆と「明君」の関係をはじめて明らかにし、民衆の政治意識解明の方法として明君録(書物)・明君像という観点を提起した。その成果は口頭報告・論文として発表した。また、松平定信らの「明君」も視野にいくつかの明君録の写本調査を継続し、秋田県立図書館・東京国立博物館・宮城県図書館等で調査を行い、各明君像の相互関係解明の足がかりを得た。調査の成果は順次発表する計画である。 (2)武士・学者等の政治意識・思想の解明:近世日本の代表的「明君」の一人と言われる米沢藩主上杉鷹山の学問受容と改革政治を事例に、藩政改革と幕藩領主層の政治理念との関係を考察し、論文として発表した。従来の思想史の死角だった18世紀後半の領主層の思想を捉える方法を提示した点、研究史的意義を有する。また、米沢藩の藩政改革での学問受容と政治理念に関しては、国文学研究資料館・国立国会図書館等にて資料調査し、改革の理論的支柱となった政道書(太宰春台『産語』等)が近代に至るまで社会的影響を及ぼし続けていたとの見通しを得た。 (3)各藩・地域の資料の調査:正宗文庫(備前市)・瀬戸内海歴史民俗資料館(高松市)等において資料調査を実施した。それぞれ、松平定信明君像の形成、中間的身分存在の政治意識を解明する突破口となり得る資料であることを確認した。また、米沢藩領の村方文書の調査を継続して行い、山形県白鷹町・諏訪神社に残る史料の整理を行った。調査の成果は今後順次発表する予定である。
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Research Products
(4 results)