2010 Fiscal Year Annual Research Report
乳癌細胞におけるシグナル伝達ダイナミクスのリン酸化プロテオーム解析
Project/Area Number |
09J05184
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
今見 考志 慶應義塾大学, 環境情報学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | リン酸化プロテオミクス / シグナル伝達ネットワーク / キナーゼ阻害薬 / 乳癌細胞 / 質量分析計 / SILAC法 |
Research Abstract |
乳癌用分子標的薬ラパチニブのin vivo薬効評価を定量的リン酸化プロテオミクス手法を用いて行った。乳癌患者の25%で過剰発現している上皮増殖因子受容体2(HER2)は癌の増殖・浸潤に積極的に関わっているため、分子標的薬の多くはHER2をターゲットにしている。ラパチニブはHER1/2に対する選択性の高さからも最も臨床で用いられている分子標的薬である。一方、ラパチニブがin vivoにおいて細胞内シグナル伝達経路にどのように作用するかは分かっていない。今回我々は質量分析法に基づく定量的リン酸化プロテオミクス手法を用いることで、約5,000ものタンパク質リン酸化部位に対して、ラパチニブ処理によって誘導される濃度・時間依存的リン酸化シグナル動態をプロファイルすることに成功した。安定同位体標識した乳癌細胞から抽出したタンパク質を消化後、独自に開発したヒドロキ酸修飾金属クロマトグラフィーによってリン酸化ペプチドを選択的に濃縮し、質量分析計によりリン酸化ペプチドを同定・定量した。その結果、全同定リン酸化ペプチドのうち5%程度がラパチニブ処理によって変動しており、HER1/2シグナル伝達経路の既知分子のみならず多くの未知シグナル伝達分子を同定することに成功した。バイオインフォマティクス解析により、これまでラパチニブが作用することが報告されていなかった特定のタンパク質ネットワーク・複合体にもラパチニブが作用しうることを示した。また、HER1/2の21のリン酸化部位に対してそれらの濃度・時間依存的リン酸化ダイナミクスをプロファイルしたところ、領域特異的にリン酸化が制御されていることを明らかにした。HER1/2のリン酸化部位とチロシンキナーゼ活性との関係性を明らかにすることで、HER1/2の活性制御の理解と新たな薬剤標的に関する考察が得られることが期待できる。
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Research Products
(5 results)