2010 Fiscal Year Annual Research Report
リガンド交換動力学に基づく海洋性藻類の鉄摂取モデルの構築
Project/Area Number |
09J05243
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 紘晃 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 鉄 / リガンド交換反応 / 光化学反応 / フルボ酸 / スーパーオキシド / pH / 酸化・還元 / 化学反応速度論 |
Research Abstract |
鉄はほぼすべての生物にとって必須な微量栄養素であり,湖沼,沿岸域,海洋など様々な水域で藻類の主要な生長制限栄養素となっている。本研究では,環境中での藻類の鉄利用性を的確に評価するために,海洋性藻類の鉄摂取モデルを構築することを目的としている。多くの藍藻類や一部の真核生物は,摂取可能な鉄が不足する環境下において鉄と特異的に親和性のある生体由来有機物(シデロフォア)を細胞外に放出し,フルボ酸などの有機鉄錯体とのリガンド交換反応により形成された鉄シデロフォア錯体を摂取する。自然水中におけるリガンド交換反応には,二価金属,自然有機リガンド濃度,pH,塩濃度,シデロフォア生成量,また,光化学的または生物化学的還元力が鉄摂取に大きな影響を及ぼすことが指摘されている。 本年度の研究では,光化学的な反応による有機鉄錯体の還元とそれに対するpHの影響を調べた。まず光化学的反応によって生成される過酸化水素濃度の測定を行った。また,フルボ酸によるスーパーオキシドの消費速度を観察し,この反応をモデル化した。上記の実験の結果,pHが上昇するにしたがいフルボ酸によるスーパーオキシド生成速度が上昇することが示された。また,pHが減少するにしたがいフルボ酸によるスーパーオキシドの消費速度定数は減少することが示された。これまでに報告されている鉄とスーパーオキシドとの反応に関する知見とこれらの成果とを組み合わせることにより,鉄の光化学的還元に対するスーパーオキシドの寄与を見積もるための有用な反応モデルが得られる。これらの現象を踏まえた上で光化学的な鉄の還元を観察したところ,光照射下においては鉄の酸化速度が変化することが示された。次年度に酸化の影響を詳しく調べることにより光還元モデルが構築されるものと期待される。
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Research Products
(5 results)