2010 Fiscal Year Annual Research Report
中観思想史の比較研究-インド仏教から中国仏教、チベット仏教、ボン教への展開
Project/Area Number |
09J05279
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
熊谷 誠慈 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | ボン教 / 二諦説 / バーヴィヴェーカ / メトゥン / ニャンメー |
Research Abstract |
本年度は、(1)インド仏教、(2)チベット仏教、(3)ボン教、(4)中国仏教の4つの領域における中観派思想の展開について研究を行った。また、(5)チベット古語・ボン教の術語辞典の編纂を継続した。 (1)インド仏教:インド仏教中観派の中でも、バーヴィヴェーカ(ca.500-570)の二諦説に関して、既存の学説の大幅な修正点を発見し、国内学会で成果発表を行った。(2)チベット仏教:チベット仏教宗義文献を中心に、空性論証の展開過程を整理し、国際学会で成果発表を行った。(3)ボン教:ボン教における二諦説の展開の全体的概要、ボン教二諦説に関する最古の論書たるメトゥン著『二諦分別論』と『二諦分別論自註』、ボン教の大家ニャンメーシェーラプギェルツェン(1356-1415)著『地・道の注釈』、そしてニャンメー著『二諦分別論註』における二諦説を整理した。以上の4つのテーマについて、4本の論文を提出し出版を受理された。(4)中国仏教:中国仏教における二諦説の展開過程を整理しており、現在は三論宗を中心に文献精読を行った。今後は、インド仏教、チベット仏教、ボン教と二諦説の展開について比較し、中国仏教の二諦説がどのような性格を持っているかを検証していく。(5)チベット古語・ボン教術語辞典:仏教伝来以前よりチベットに存在するボン教の文献中には、仏教には存在しない多くの術語や古語が出てくる。そこで既存のチベット語辞典や仏教語辞典などでカバーできない語彙を集めた、チベット古語・ボン教術語辞典を編纂し始めた。現在、全30基字中、第1~3基字のセクションの原稿が完成した。全30基字のセクションを完成させるには、相当な年数がかかると思われるため、分冊化して適宜出版を行う予定である。
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Research Products
(7 results)