2010 Fiscal Year Annual Research Report
家族の多様性と生活実践に関する歴史人口学的・地域社会学的研究-日本の家族の250
Project/Area Number |
09J05283
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中島 満大 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 婚外出生 / 歴史人口学 / 生活実践 |
Research Abstract |
2010年度は、歴史人口学的手法を用い、野母村における婚外子のライフコースを考察した。そこで「近世後期海村において婚外子と婚内子とのあいだに違いがあるのか」を仮説として設定し、幾つかの人口学的イベントでの比較を行った。まず5歳未満の死亡であるが、分析結果からは、「婚外出生」と婚内出生の違いが、幼少期の死亡可能性の差にはつながらないことが明らかになった。次に結婚においても、「婚外出生」の子どもの方が、その他の子どもに比して、結婚する可能性が低いという結果は得られなかった。最後に結婚以外での世帯間の移動に注目すると、ひとつの差が浮かび上がる。世帯間移動、特に20歳未満の移動は、明確な差が現れた。「婚外出生」で生まれた子どもの方が、その他の子どもに比べて、20歳未満で移動する機会が多いことが明らかになった。 これらの結果から、野母村における結婚の役割が浮かび上がってくる。野母村においては、結婚は、子どもに居場所を与える役割を持っていた。それに加えて、結婚により居場所を得られない子どもは、特に幼少期の世帯間移動によって、居場所を見つけていた。これらの生活実践によって、世帯と子どもとのミスマッチを村落内で調整していた。またそこから、野母村での子どもに対する考え方を見通すことができる。野母村は海村であるため、民俗学で言われているように、小さいころから漁撈技術を身につけておく必要があった。海で生きていくため、生活していくためには、子どもにとっても、村落にとっても、幼少期の技術の習得、そしてそれを調整する結婚や移動といった生活実践が必要であった。2010年度は、人口システムと生活実践との関連を探索的に示すことができた。
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Research Products
(2 results)