2009 Fiscal Year Annual Research Report
中性低イオン強度下における鶏骨格筋ミオシンの溶解機構の解明
Project/Area Number |
09J05299
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
早川 徹 Hokkaido University, 大学院・農学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ミオシン / L-メロミオシン / L-ヒスチジン / タンパク質の可溶化 / 畜産物利用 / 生化学 |
Research Abstract |
これまでの研究により、本来、高イオン強度溶液にしか溶解しないミオシンが、L-ヒスチジン(His)の添加により低イオン強度溶液に対しても溶解することを明らかにしたが、その溶解機構は不明なままである。筋原線維タンパク質の低イオン強度溶液への溶解の際にはミオシンをいかに溶解できるかが全筋原線維タンパク質の溶解度に大きな影響を及ぼしていることから、食肉タンパク質の水溶化技術を食品に応用するためには、ミオシンの低イオン強度溶液への溶解機構の解明が必須である。本研究ではミオシン尾部の構造に焦点を当て、ミオシンの低イオン強度溶液への溶解機構について追究した。ミオシン尾部領域の酵素分解断片であるL-メロミオシン(LMM)を調製し実験に用いた。Hisを含む低イオン強度溶液中でLMMは、ミオシンと同じく単量体で存在し、その分子長は高イオン強度下で溶解しているLMMよりも有意に長かった。そこで、LMM分子の性状に変化が生じていると考え、Hisを含む低イオン強度溶液に溶解したLMMの二次構造(αヘリックス含量)、表面電荷、および表面疎水性について検討を行った。αヘリックス含量には変化がなかったものの、表面電荷および表面疎水性においては、高イオン強度下のLMMと違いが見られ、LMMの分子性状に構造的な変化が起きていることが示唆された。また、ミオシンの尾部領域は、その加熱ゲル形成にも関与していることから、Hisを含む低イオン強度下のミオシンではゲル化特性も異なることが考えられる。そこで、Hisを含む低イオン強度下のミオシンを加熱すると、一般的なミオシンの白濁した加熱ゲルとは異なり、45℃付近の比較的低温で透明なゲルを形成した。電子顕微鏡によりその微細構造を観察したところ、小さい粒子が細かい網目状のネットワークを組んでおり、一般的なミオシンの加熱ゲルの構造とは大きく異なることが示された。
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Research Products
(5 results)