2010 Fiscal Year Annual Research Report
1910年代の帝政ロシア映画―エフゲーニ・バウエルを中心に―
Project/Area Number |
09J05307
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小川 佐和子 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | エヴゲーニイ・バウエル / 無声映画 / 第一次世界大戦 / セノグラフィー / 映画祭 / 女優 / 演技論 / 帝政ロシア |
Research Abstract |
二〇一〇年六月二四日から二六日まで開催された学会「Women and the Silent Screen VI」に参加し、一九一〇年代の無声映画における女優をめぐる比較演技研究の成果を発表した。本発表は各国の研究者から高く評価され、英文による学会報告集の一部として出版される予定である。また、本発表をもとにした論文は今年度の『早稲田大学文学研究科紀要』に掲載された。従来の映画研究ではスターをめぐる研究はなされているが、演技をめぐる研究は充分とは言えない。映画形式を決定づけるとも言えるスター女優の演技の研究は今後も重要性を増すと考えられる。この学会はボローニャ復元映画祭のプレイベントであり、申請者は学会発表に引き続き映画祭に参加し、同時代の無声映画を調査し、その後、アーカイヴや図書館で資料を収集した。下半期では、映画におけるセノグラフィーをめぐって、帝政ロシア映画を中心とする一九一〇年代の映画形式に関する研究を進めた。その成果は二〇一一年一月一七日から一九日まで早稲田大学で開催されたグローバルCOE主催の国際シンポジウム「映画と演劇におけるピクチャレスク」で「エヴゲーニイ・バウエルにおけるセノグラフィー」と題して発表を行った。本研究は、セノグラフィーという観点から、ルネサンス期の遠近法という古典的な美学を無声映画おいて復権させたバウエル作品を検証し、バウエルの特殊な形式を明るみに出した。海外からの招聘された講師に向けて、日本におけるバウエル研究をアピールすることができた。本発表はバウエルをめぐる単著『エヴゲーニイ・バウエルの美学』(仮題)の中心となる議論であり、発表に基づく論文も執筆中である。主要な研究経費はイタリアでの学会発表、映画祭参加、アーカイヴ・図書館調査、研究図書の購入に充てられた。
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Research Products
(3 results)