2009 Fiscal Year Annual Research Report
農村におけるソーシャルキャピタルの役割と地域資源維持管理行動の経済分析
Project/Area Number |
09J05339
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西原 是良 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ストックマネジメント / ネットワーク分析 / 農地流動化 / 農業経済学 |
Research Abstract |
今年度は,維持管理活動の実態を把握するために,調査対象土地改良区管内の農業構造の把握とその指標化の作業を行った.特に水路の維持管理に関連する,農家間の土地貸借関係を図示・指標化し,地域比較を可能にすることを企図した.次に土地改良区の所有者データと市役所の耕作者データを元にして,貸借関係のネットワーク図を作成した.各図からは貸借関係は特定の人物に集中する傾向がみられる.これを複数の指標からみると,まず密度の計算から,貸借による社会関係は比較的整理されており,複雑で濃密な関係とは言えない.これは農業の担い手が個別農家に集中している事を示唆する.また,推移性の値は4集落共に低く,貸し借りが一対一の関係である事が多い事を示している. 現在の分析からわかる事をまとめる.まず,維持管理活動の維持が困難である原因の一つは,維持管理活動の負担者が耕作者であるためである.農地の所有状況は現在でも集落内の農家が大変を占めている.このことは,農地保全を考えるに際し,維持管理活動の負担を,耕作者と所有者でどのように分担するか,を考える上で重要と思われる. 指標から説明できるものとその限界についてまとめる.まず,集落内の農地所有率は,集落が都市的性格を持っているか否かを反映する.これは指標の住所を用いたためこうした判断が可能であると言える.また,集落内農地所有率と農家階層別多様性は,特有の値を取る.これは,調査地域の同質性を表す一つの指標になるかもしれない.一方,「地区」や「集落」が住所に基づいているため,境界に居住している,などの理由で現実には「出作」とまで言えない人を排除している点である.こうしたネットワーク構造の指標化を進めることで、地域の合意形成の基盤となるソーシャルキャピタルの定量的把握のための新しい情報を得る事が出来たのが、今年度研究の意義である.
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Research Products
(1 results)