2010 Fiscal Year Annual Research Report
精子による卵外被認識とそれに伴う精子膜ラフトによる先体反応のシグナル伝達
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09J05395
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
成瀬 正啓 慶應義塾大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ARISタンパク質 / 先体反応 / 種認識 |
Research Abstract |
研究代表者は、棘皮動物門のヒトデ類を主として用いて、受精に必須な精子の形態変化である先体反応の誘起物質を構成する新規のタンパク質としてARISタンパク質を同定し、その遺伝子配列からの相同性検索によって、この分子が無脊椎動物において広く保存されていることを予想した。 まず、棘皮動物門内のナマコ綱・ウミユリ綱等の動物においてもヒトデ同様に、ARISタンパク質が先体反応誘起物質を構成していることを確認し、そして、棘皮動物と近縁の半索動物門に属するシモダギボシムシ、また頭索動物門に属するヒガシナメクジウオを用いて発現解析を行い、これらの動物門においてもARISタンパク質が卵巣で発現し、棘皮動物と同様な機能を担っている可能性を示唆した。また、動物界の初期で分岐している有櫛動物門に属するカブトクラゲ類においてもARIS遺伝子が存在し、その受精の形態的様式が棘皮動物と類似していることを発見し、精子-卵間認識が共通の分子基盤を利用して進化してきたことを示した。 また精子の卵への走化性を数理モデルで表現することを目指し、ヒトデ精子の走化性機構の解析を行った。その結果、走化性物質受容体の脱リン酸化による脱感作が走化性現象に必須であることを発見した。また、U.B.Kaupp教授(ドイツ:Center of advanced European studies and research)との共同研究により、受容体が協同的な振る舞いを見せることが示され、誘引源に近づくにつれて精子の受容体が2重の脱感作を受けていることが明らかとなった。この機構を模してin silicoに構築した精子モデルは強い走化性を示し、精子の走化性因子受容体の脱感作が走化性現象の核となっていることを示唆した。
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Research Products
(8 results)