2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J05457
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
廣岡 俊亮 千葉大学, 大学院・融合科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 葉緑体 / 高温ストレス / 色素体転写 / シグマ因子 |
Research Abstract |
本研究の目的は高温耐性植物の作出と高温ストレス条件下で発生する活性酸素の分子標的を明らかにすることであった。これまでに、高温環境に生息するシゾンの活性酸素除去酵素CmstAPXをシロイヌナズナに導入する事により、高温耐性を強化する事に成功している(Hirooka et al.2009)。そこで、本年度の目標を高温条件下で発生する活性酸素の分子標的を明らかにする事とした。高温条件では葉緑体分化が著しく阻害されることから、活性酸素の分子標的として葉緑体分化に関わる因子が候補となった。そして、候補因子として色素体ゲノムの転写を司るPEP(plastid-encoded plastid RNA polymerase)の転写調節因子であるシグマ因子に着目した。シロイヌナズナには6種類のシグマ因子が存在することが明らかになっており、これらの内SIG2とSIG6の欠損株において葉緑体分化の異常を示す子葉の黄化が観察されていた。そこで本研究では葉緑体分化の初期の光合成関連遺伝子の転写を行うと考えられているSIG6に着目し研究を行った。まず、詳細な表現型を観察したところ、これまでに明らかになっていた子葉段階での葉の黄化に加え、新出葉の基部においてもSIG6欠損の影響と考えられる黄化が観察された。相補性試験の結果、子葉と新出葉の基部は緑化したため、これらの表現型はSIG6欠損に由来する事が明らかになった。続いて、SIG6の発現組織の解析をプロモーターGUS法を用いて行った。すると、子葉と新出葉において強い発現が観察された。この結果は表現型と同様にSIG6が葉緑体分化の初期に機能していることを示唆している。また、SIG6欠損株においては高温ストレス条件下において葉緑体分化阻害が起因と考えられる葉の黄化が野生型と比較し顕著に観察された。このことから、SIG6が通常条件・高温条件下の両方で葉緑体分化を正常に行う為に重要な役割を果たしていることが明かになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は大きく二つに分けて高温耐性植物の作出と高温障害の分子機構の解明であった。まず、高温環境下に生息するシゾンの活性酸素除去酵素であるCmstAPXの導入により高温耐性植物の作出に成功した。そして、活性酸素の分子標的の絞り込みを行い転写調節因子であるSIG6をその候補因子として明らかにした。よって、おおむね順調に研究が進展している。
|
Research Products
(3 results)